クラウド サービスの利用と基礎知識


2010年を迎えるあたりからユビキタスやらWEB2.0やら色々な言葉が出回り、それぞれ意味するところは微妙に異なっているものの、それらを象徴する「フワッ」とした感じで「クラウド」という言葉が定着した。

クラウドを辞典で引くと「雲」。
ネットワーク環境が雲に例えられることから付いた呼称だが、IT関連に興味がなければ意味が分からない。
クラウドとは何か?といえば「ネットワークコンピューティングの総称」で、ネットワーク上で利用するアプリケーションやストレージ、サーバーのこと。
と、言われても、分かったような分からないような感じだが、現在スマホやPCを使用していると少なからずクラウドを利用、もしくはクラウドサービスを目にしている。

クラウドサービス

クラウドサービスの中でも一番身近で、利用頻度と利便性の高いクラウドアプリの代表格がGmailなどのWebメール。
メールアドレスを無料で作成できるため、以前は「捨てアド」として使用されることが多く、ほとんどのネット通販ではイタズラ注文防止のため使用が禁じられ ていたが、携帯電話での利用が可能になったあたりからフリーメールの位置付けに変化が生じ、スマホの台頭とともにWebメールは一般化した。

クラウドサービスが普及した背景には、通信環境とモバイルデバイスの進化、そして複数のデバイスを所有した際に生じる「データ同期」の問題がある。
通信環境は3Gと呼ばれる第三世代のモバイルネットワークにより通信速度がメガクラスになり、第二世代(2G)の64kbps、2.5Gの144kbpsから飛躍的に向上した。docomoで例えるならMOVAからFOMAへの移行がこれに該当する。

通信速度の向上は大容量のデータ送受信を可能にし、3Gが主流となった2006~2007年にはネットブックと呼ばれる低価格でB5サイズ以下のモバイルPCも登場。
通信環境やデバイスの進化と低価格化によって、モバイル環境の利便性は大きく改善したが、デスクトップPC、ノートPC、携帯電話と使用するデバイスが増えるに連れ、データの分散化と重複に悩まされることになる。

デバイスが増えた便利さよりも、データが分散する不便さの方が遥かに勝っているので、データの同期がスムーズに行えなければ、もともと使用頻度の高かったデバイスが優先され、追加したデバイスは無用の長物になりかねない。
このジレンマの解決策として、クラウドサービスは大いに有効だった。



Webメール

2007年頃まではパソコンでやり取りするメールは、Outlook ExpressやThunderbirdなどのメーラーと呼ばれるソフトの使用が一般的だった。
パソコンにインストールされているメーラーには、メールサーバとのやりとりをするためPOP3やSTMPなどの設定が必要で、PCビギナーにとっては大きな試練だった。

メールアドレスは「アカウント@ドメイン」から構成され、ドメインが住所のような役割を担っており、「 xxx@zzz.co.jp」というアドレスなら、「zzz.co.jp」に所属している「xxxさん」という意味のため、メールアカウントとドメインの組み合わせはオンリーワンになっている。
このxxxさん宛に送信されたメールは、zzz.co.jpを管理しているサーバに届き、サーバ側でxxxさんの私書箱に預けられる。

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従来のメーラーや携帯電話のメール機能は、サーバにアクセスして私書箱にメールが来ているか確認し、届いていればメールをパソコンや携帯電話(ローカル側)にダウンロードする。

メールの作成や保管は基本的にローカル側で行うため、オフラインでも受信したメールは閲覧できるが、複数のデバイスで同じメールを閲覧する場合は、転送する必要がある。

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Webメールはインターネットを閲覧するウェブブラウザを使用して操作し、アカウントとパスワードを入力してサーバにアクセスする。
メールの作成や送受信は全てサーバ上で行うため、通常メールのようにPOP3やSMTPといった設定を必要とせず、サーバで作業を行うためメールをパソコンにダウンロードする必要もない。
先の喩えを当てはめるなら、私書箱に届いたメールをその場で開封して処理することになる。
サーバ側にはメーラーと同等の機能が備わっているため、処理したメールはサーバ側に保管されていく。

メールの作成や保管の操作はPC側で行うが、処理を実行しているのはPCではなくサーバのため、通信環境さえあればアカウントとパスワードでいつでもメールにアクセスが可能になる反面、オフラインでは直近のメールしか閲覧することが出来ないデメリットがある。

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オンラインストレージ

オンライン上に確保された記憶領域(ストレージ)を、パソコンのハードディスクのように取り扱えるサービスがオンラインストレージ。

代表的なサービスとしてはDropbox、OneDrive、GoogleDrive、boxなどがあり、これらはローカル側(パソコン側)にプログラムをインストールし、生成されたフォルダ内のデータとクラウド(ネットワーク)上の記憶領域(オンラインストレージ)の同期をとる仕様になっている。

このタイプのオンラインストレージはローカルPCと同期する仕様のため、当初はローカル側にはオンラインストレージと同等以上の空き容量を必要としていたが、モバイルデバイスへの対応により、同期するフォルダやファイルが指定できるようになり、更にモバイルでは必要に応じてダウンロードするような仕様に進化している。

Dropboxなどは更新されるデータの保存、もしくはアーカイブ用として利用されることが多いが、ビジネスではメールに添付できない大きなファイルを先方に送る際に、宅ふぁいる便firestorageなどのオンラインストレージがよく利用されている。

これらのサービスはファイルをオンラインストレージにアップし、そのファイルをダウンロードできるURLを生成して、先方にメールなどで送信する仕組みで、ファイルの保管期限が設けられており、保存期限を過ぎると自動的に削除されるようになっている。

このタイプはユーザー登録をしなくても利用できる手軽さが売りのサービスで、ユーザー登録すると付加サービスが利用できるようになる。CD-RやSDカードなどを郵送することを考えれば手間と時間を大幅に削減できる。

DropboxやOneDriveなどの同期型と異なり、オンラインストレージの保存されているファイルを直接編集するのがWebDAVタイプ。

WebDAV は「Web-based Distributed Authoring and Versioning」の略称で、サーバに対して直接コピーや削除を行える規約で、オンラインストレージをローカル ディスクのような感覚で使用できるようになり、コピーや削除だけでなくファイルを開いたり編集することもできる。

WebDAVの最大の特徴は、同期タイプと異なりローカル側の空き容量に関係なく使用できることにある。
同期タイプのオンラインストレージに1TBのデータがあった場合、全てにアクセスしようと思えばローカル側に1TB以上の空き容量が必要になるが、 WebDAVタイプでは1TBのハードディスクが増設された感覚で利用できる。
ただし、ファイルやフォルダへのアクセスは通信環境に大きく左右されるた め、ブラウザからの操作したほうがスムーズな場合が多い。

WebDAVタイプのサービスにはBitcasaがあったのだが、2016年にサービスが終了している。

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オンラインストレージの活用

最近は情報漏洩に過敏なので、会社によっては社内データの外部持ち出しを禁止しているところもあるが、依然としてUSBフラッシュを携帯しているビジネスマンは多い。
発売当初のUSBメモリは32MBや64MBだったため、用途は限られていたのだが、記憶域の大容量化と低価格化により、USBメモリを外付けHDDのように利用するケースが増えている。

USBメモリは携帯性、汎用性、利便性と三拍子揃ったリムーバブルメディアだが、便利なだけに使用機会が増えるとリスクも高くなる。

USBメモリのリスクは物理的な「紛失」だけではなく、機器の劣化による「データの消失」にも注意が必要。
USBメモリは半導体メモリのため、HDDのような磁気ディスク装置と比較すると、データの書き換え回数や保存性が低い。

物理的なデメリットだけでなく、実際の利用でも注意すべき点が「データの重複」。
USBメモリは手軽にデータをコピーでき、他のデバイスに移せるが、PC1からPC2へ1つのファイルをコピーした場合、当然、同じファイルが3つ存在することになる。

同一ファイルが重複して存在している状態は、色々と厄介なので避けたいところだが、データ消失のリスクを犯してUSBメモリにのみ保存しない限り、複数の端末で同一データを取り扱うと必ずコピーが生じてしまう。
しかし、USBメモリの代わりに同期型のオンラインストレージを利用すると、「紛失」「データ消失」「ファイルの重複」というUSBメモリを利用する際のデメリットが全て解消される。

また、オンラインストレージを利用すれば、スマホやタブレット、モバイルPCなど記憶領域が少ないデバイスで、端末に実装されている記憶容量を遥かに超えるデータにアクセスが可能になる。

紙の資料などをスキャニングしてオンラインストレージへアップする手間はかかるものの、それらの資料やデータファイルをアップしていれば、端末の保存領域を圧迫することもなく、データを持ち運ぶリスクも回避でき、「資料を忘れた」「ファイルが会社のPCの中」など出先でのアクシデントもフォロー可能になったりする。

複製そのものにリスクはないが、自宅と会社など自分の管理範囲で同一データが複数存在すると、「うっかりミス」で取り返しがつかなくなる可能性が生じる。

情報セキュリティとリスク

クラウドサービスを利用する際の最大の懸念はやはりセキュリティー。
クラウド(雲)という掴みどころがなく、目にも見えない場所にデータを保存するので、何となく気持ち悪さが拭えないという人も多い。
極論だがオンラインにする時点で完璧なセキュリティは期待できない。

Windows XPのサポート終了時に、アップデートされないOSは「窓の割れた家」という表現が使われたが、クラウドサービスは自宅ではない別の場所に、自分しか知らないはずのトンネルを作っているイメージで、別の場所には「ID」と「パスワード」という鍵がかかっており、鍵を開けるとトンネル内を通ってデータのやりとりが可能になる。

セキュリティ面ではじめに気になるのが「別の場所の安全性」。
つまりクラウドサービスを提供している側が、ユーザーから預かっているデータに対して、どれほどのセキュリティをかけているのかという問題。

「暗号化技術で保護されています」「情報管理には万全を期しています」などなど、言い回しは様々だが、どのサービスも利用規約には似たような事が明記されている。
つまり、預けているデータのセキュリティに関しては「相手を信用するしかない」のが現状で、仮にどれほど厳重なセキュリティが施されているかの詳細を記されても、専門的すぎて判断できるようなものでもない。

データを預かっている側は、保存されているデータを閲覧できる状態にある。
無論、従業員の行動は管理され、閲覧できないようなオペレーションになっているのだが、管理しているのが人である以上、必ず人為的な事故は発生する。

クラウドサービスではないが、プライバシーマークも取得していたベネッセの個人情報流出は、正に人為的な事件で、立派なことを謳っていても所詮は携わっている人間の質に左右されてしまう証左のようなもの。
毛色は異なるが2014年3月に報道されたMicrosoftのメール無断閲覧は、同社から盗まれたソースコードについて自社で調査した際、同社のWeb メールサービスを利用しているユーザーのコンテンツに無断でアクセスし、メールとインスタントメッセージを閲覧したというもので、事件そのものは無断閲覧 をしたことで証拠を掴み解決している。

無断閲覧そのものは利用規約に基づくもので合法なのだが、改めてサービス提供側が、預かっているデータへアクセスできることを世に知らしめることになった。
この件は無断閲覧への批判が集中し、Microsoftはプライバシーポリシーの変更に至っている。

2012年にはDropboxでユーザーのIDとパスワードが流出しており、同じ年にヤフー子会社のファーストサーバで、保存されているデータが消失する事故が発生している。

セキュリティリテラシー

クラウドサービスの特徴にファイルの共有と公開がある。
オンラインでのアクセスが可能なため、1つのファイルを複数で編集したり、ホームページのように公開することもできる非常に便利な機能だが、この機能が仇となって情報が流出するケースが後を絶たない。

過去に大きな問題となったのがGoogleマップに実装されているマイマップ機能。
現在ではデフォルト(初期設定)が非公開で、公開設定は左図のような手順が必要になっているが、以前のバージョンでは「一般公開」がデフォルトになっていた。

Googleマップのマイマップ機能は、地図にポイントを付けて情報を書き込むことができる便利なサービスで、おそらくオススメの店などの情報を発信するためのツールとして実装されたものだと思われる。
情報の発信ツールなので公開設定になっているのも納得できる。

ところが、このマイマップに個人情報を詰め込んだ挙句、公開設定を変更せずに保存して、開けっぴろげに一般公開する事例が多発。
これを受けてGoogleはマイマップの仕様を変更したのだが、非があるのはGoogleではなく、利用するサービスの性質を理解していないか、うっかりな誤操作なのか、いずれにせよサービスを利用したユーザー側にある。

DropboxやOneDriveなどのオンラインストレージサービス、Evernoteのようなオンラインノート、ウェブアルバム、カレンダーやマップなど、クラウドサービスには、必ずと言っていいほど共有や公開機能が備わっている。
友達数人に共有したつもりが、全世界に公開されていたり、そもそも公開や共有の意味を理解せずにサービスを利用しているケースも見受けられる。

情報流出といえばクラッキングなど外部から攻撃されるイメージが強いが、国内で発生している情報漏洩事件では9割が内部要因になっており、そのうち管理ミスと誤操作が8割を占め、ベネッセのような内部犯罪はわずか数パーセントというのが実状。

結局のところセキュリティに関してはユーザー側の使い方次第というところが大きく、クラウド上のセキュリティが完璧でないことを踏まえた上で、取り扱うデータの重要性や機密性を考慮して運用していく必要がある。

サービスの安定性

クラウドサービスはセキュリティ面だけでなく、サービスの安定性も大きな問題。
Bitcasaのようにサービス提供を停止したり、Microsoftのようにオンラインストレージの容量を何度も変更したり、サービスそのものの仕様が変わったりと、サービス提供者側の都合で利用環境が左右されることは留意しておくべき。

とは言え、デメリットを補って余りあるメリットがあればこそ、クラウドサービスは全世界に広まったわけなので、「クラウドが万能ではない」という認識を持った上で利用することが大切なのかも。





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