キャッシュレス決済の普及と問題


2018/08/18

ここ数年でやたらと「キャッシュレス化」が話題になっている。
しかも、そのニュースの大半は「キャッシュレス化が普及していない日本が遅れている」と煽るような内容だったりするが、個人的には妙な違和感がある。



キャッシュレスの話題でよく引き合いに出されるのが中国と韓国。
いずれもキャッシュレス決済の割合が60%を超えているのに対して日本は20%程度。

キャッシュレス・ビジョン 平成30年4月 経済産業省

クレジットカード大国の韓国は、キャッシュレス決済の割合が90%近くあり、確かにキャッシュレス大国ではあるものの、近年は若者のカード破産者が急増し、経済そのものが破綻の危機に瀕しているのは周知の事実。
そもそも韓国がキャッシュレス大国になったのは、韓国政府が政策として、クレジットカード年間利用額の20%の所得控除、クレジットカード1000円以上の利用で毎月 宝くじの権利獲得という、利用者にとってメリットしかない条件でクレジットカードの利用を促進する一方で、脱税対策として年商240万円以上の店舗にクレジットカード決済を義務付けたため。

中国に関しては信用情報機関が未発達でクレジットカードの普及が遅れていた為、与信審査の必要ないデビットカードが広く普及し、その中でも銀聯カードは第三の国際ブランドになりつつある。
日本国内でもキャッシュレス化推進のため、高額紙幣を無くすという意見があるように、中国の最高紙幣「100人民元」は円に換算すると1500円程度のもので、高額品を現金で購入するのは面倒だということもあってデビットカードが普及し、その素地があるところにアリペイやウィチャットペイが浸透した感じ。

無論、アリペイやウィーチャットペイも単独で普及したわけではなく、個人の消費動向や税金の支払い、借金などの信用情報を管理できるため、個人を監視したい中国政府のバックアップがある。
また、中国では銀聯カードの利用手数料率が1%未満、アリペイやウィーチャットペイに関しては手数料がなんと「ゼロ」になっている。

偽札が多い中国では、現金の場合は偽札のチェックが必要なために手間がかかるが、デビットカードなら1%未満、アリペイやウィーチャットペイであれば手数料ゼロで、偽札のリスクを回避できるという大きなメリットがある。
販売店のオーナーであれば、誰しも電子マネーの導入を率先して行うかと思う。

一方、日本国内のクレジットカード手数料は、水商売で7%前後、飲食は5%前後、物販は4%前後が標準で、電子マネーの手数料もクレジットカードに準じており、決して安くはない。
ただ、百貨店やコンビニ、大手量販店などは、スケールメリットがあるので手数料は1~2%だと言われている。

もともと販売側が手数料を支払ってまでクレジットカードを導入するメリットは、現金が足りなくても買い物ができるという1点のみ。
より多くの買い物をしてもらえるなら、手数料を支払う価値があるというわけだが、昨今は随分と状況が変わり、クレジットカードが使えて当たり前になっている。

一昔前の大阪日本橋などでは、支払いにクレジットカードを利用すると5%割増されたり、現金だと割引されたり、商品によっては支払いが現金のみだったり、クレジットカードの利用に◯◯円以上と条件があったりしたものだが、これらはクレジットカード契約時の約款で禁止されている。
その理由は、現金のみだと獲得できなかった売上が、クレジットカードの利用によってもたらされたので、言うなれば手数料は販促費のようなもののため、客に転嫁せず店舗側で負担すべきというもの。
確かに今まではクレジットカードが使えると販売チャンスが増加するので、決して安くはない手数料を店舗側が負担するのは当然だった。

が、昨今はそのあたりの事情も変わりつつある。

以前は暗黙の了解のようなもので、少額な買い物ではクレジットカードの利用を避ける風潮があったのだが、いまはコンビニやスーパーではなく専門店でも、わずか数百円の支払いにクレジットカードを利用する人が増えている。
当然、クレジットカードのように暗証番号やサインが不要で、気軽に使用できる電子マネーを導入すれば、少額な買い物で利用されるのは目に見えている。

それまで現金で支払われていたものが、クレジットカードや電子マネーで支払われることになれば、販売側は手数料の負担だけが増える。
キャッシュレス化を煽っているメディアは一様に、この「手数料」について触れていない。
ただでさえ販売店は人手不足と人件費などの高騰で収益が悪化しており、収益を圧迫する電子マネー等の導入はそれこそ販売店の死活問題になる。
完全にキャッシュレス化しない限り、釣り銭の準備や売上金の入金などは必要な上、一般的な店舗では従業員のオペレーションが増えるのみで、経費の削減にはつながらない。

キャッシュレス化は国や銀行、ユーザーにとってはメリットがあるものの、それを導入する販売店側、特に中小零細の販売店にはメリットどころかデメリットしか無いので、普及しないのは当たり前。

使用するユーザーを増やす前に、取扱店舗を増やさなければ、ローカルなポイントカードや商品券と大差はない。
「偉い人にはそれがわからんのです。」と言いたいところだが、そんな現状を打開しそうなのがソフトバンクとLINE。

「LINE Pay 店舗用アプリ」公開、夏から決済手数料の無料化も

ソフトバンクとヤフー、今秋にスマホ決済サービス「PayPay」開始へ

いずれもスマホを利用した決済で、3年間という期限付きだが販売店側の負担がないため、従来の電子マネーなどに比べると導入しやすいが、地ならし~種まき期間が無料で、ようやく芽吹いて回収できる頃に有料というのは微妙な感じ。

普及に関しては販売店側の問題が大きいが、キャッシュレスで利用者側が注意すべきなのは、中国政府が目をつけているように、金銭の流れは個人の生活状況を知る最も有効な手段だと言うこと。
どこで何を買ったか、何を食べたか、どこに泊まったかなどなど、普段の生活から趣味嗜好まで、お金の使い方を見れば生活を把握できる。

中国ではアリペイやウィチャットペイが、政府に監視されていることを承知の上で使用しているのだとか。
もともと監視されているので、どうせ監視されるなら便利な方が良いという考え方らしい。

GoogleやFacebook、LINEなど無料で利用できる便利なサービスが、個人情報を取得して収益化しているように、便利さの代償はそれほど安くなかったりする。





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