自作パソコンのメリット
- パソコンのスペックを自由に構成できる
- 性能・省電力・静音性・見た目など市販のパソコンよりも目的に特化した仕様が可能
- オーバークロックで CPUや メモリの性能を引き上げることができる
円高だった 2010年前後は自作PCのメリットにコストも含まれていたが、世界的な半導体不足もあって現在の為替レートでは自作PCに以前のようなコスパはなく、同等スペックであれば HPや DELLなど、グローバルメーカーの製品が安価な場合もある。
パーツ構成のポイント
パソコンの基本的な構成は CPU・メモリ・マザーボード・電源ユニット・ストレージ・ケース で、CPU・メモリ・マザーボードは世代によって規格が変わるため、規格に適合したモデルで構成する。
- CPUとマザーボードのソケット一致
- マザーボードのメモリスロットの規格に合ったメモリ
- CPUや搭載する HDDなど総合的な消費電力を供給できる電源ユニット
- マザーボードのフォームファクタに見合った ケース
バルクとリテール
- バルク品
業者間で 取引される製品。 - リテール品
一般消費者向け(市販向け)の製品。
自作PCの組立に必要な工具
CPU
CPU(Central Processor Unit)は 中央処理装置(中央演算処理装置)と和訳されるパソコンの頭脳に相当する部分で、CPUの性能によってパソコンの処理速度は大きく変わってくる。
- コア
コアは CPUの頭脳に相当する部分で、近年は複数のコアを搭載した CPUが主流で、各コアに処理を分散して効率化を図っている。 - スレッド
CPUが実行する処理の最小単位が スレッド(Thread)で、現在 Intel/ AMDの CPUは 1のコアで複数のスレッドを同時に処理する SMT (Simultaneous Multi Threading)が採用されている。 - 動作クロック(基本クロック)
動作周波数(クロック)は高いほど多くの処理を同一時間内に行えるが、動作クロックに比例して発熱量と消費電力も増加するため、動作クロックの高いパソコンは相応の電源ユニットと冷却装置が必要になる。 - ターボ機能(最大ブーストクロック)
ターボ機能はシングルスレッドのアプリケーション利用時、1部のコアに負荷が集中している場合に、空いているコアの動作を停止し、負荷が集中しているコアの動作クロックを一時的に上昇させる技術で、インテルは「ターボ・ブースト・テクノロジー」 、 AMDは「ターボコア・テクノロジー」 が使用されている。
ターボ機能はオーバークロックのように全てのコアが上限まで上がるのではなく、設定された総発熱量の範囲内で効率化が図られる。
- TDP(最大放熱量)
TDP(Thermal Design Power)は CPUの最大出力時の消費電力で、TDPの値が大きければ多くの電力を消費して放熱量が増加するため、相応の電力供給と冷却が必要になる。 - キャッシュ
CPUの情報伝達経路で発生する遅延対策として転送効率を向上させるために実装されている手段で、 - グラフィック機能
CPUが描画処理を行う GPUを実装している場合は、マザーボード内蔵のグラフィック機能を使用できるが、グラフィック機能を実装していない CPUは別途 グラフィックカードが必要になる。
パソコンの CPUは Intel(インテル)と AMD(エーエムディ)の 2 大メーカーが製品を供給しており、市販の PCにはインテル製の CPUを搭載しているものが多く、AMDの CPUは自作派に根強い人気がある。
マザーボード
マザーボード (MB)はシステムボードやメインボードとも呼ばれる CPUやメモリなどを設置する基盤で、CPUソケット・フォームファクタ・PCIスロットなどのほか、ストレージに M.2を使用する場合は M.2スロットの確認も必要。
AMDのソケットは一部で下位互換をサポートしているが、基本的にソケットは互換性がないため、インテル CPU 対応/ AMD CPU対応 という表記だけでマザーボードを選ぶと CPUを搭載できない可能性がある。
- ソケット
CPUを固定する部分をソケットやスロットといい、CPUのモデルによって対応しているソケットの形状が異なるため、使用する CPUをサポートした製品を選択する。
ソケットは CPU の設計(マイクロアーキテクチャ)が大きく変わるたびに形状が変化する傾向があり、仕様書の パッケージや対応ソケット に表記されている。 - フォームファクタ
マザーボードのサイズで、ATX・MicroATX(M-ATX)・Mini ITXなどの規格があり、大きさだけでなく拡張性や基本性能が異なるので、使用する PCケースや制作する PCのスペックを考慮して選定する。 - メモリスロット
現行のメモリは DRAMを搭載した DIMMが主流で、DRAMには DDR3や DDR4など複数の仕様があり、物理的に互換性がないため、メモリスロットの規格に適合したメモリを使用する。
メモリの最大搭載容量はマザーボードによって異なるが、32bit OSはマザーボードの最大容量に関係なく利用できるサイズは 4GBが上限で、64bitの Windowsはエディションによって容量が異なり、Homeで最大 128GB、Proは 2TBまで利用できるが、一般的な MBはハイエンドモデルでも最大 128GBのものが多い。
- グラフィック機能
内蔵グラフィックは CPUが実装しているグラフィックス機能の出力をサポートするもので、マザーボードに HDMIや Display Portなどの映像出力ポートがある。
随分昔の話だが Socket 7という形状のソケットは、当時主流だった IntelのPentiumが採用しただけでなく、AMDの K6という CPUも Socket 7と互換性があり、マザーボードを交換せずに CPU だけ換装することが可能だったが、インテルの Pentium Pro , AMDの K6 – 2 の頃から専用のソケットが採用されて現在に至っている。
メインメモリ
ランダムアクセスメモリ(RAM)は CPUが直接アクセスするパソコンの主記憶装置(メインメモリ)で、SSDや HDDよりも高速だが、現在普及している DRAM(Dynamic Random Access Memory)は一定時間が経過するとデータが消えるという特徴がある。
メモリは PC4-25600(DDR4-3200)のような形で表記されることが多く、PC4-25600はモジュールの規格、DDR4-3200がチップの規格で、PC4(DDR4)、転送速度 25600MB/s、クロック速度 3200MT/s を表している。
- ECC
メモリの仕様に表記されている ECC(Error Check and Correct memory)はメモリのエラーチェック機能で、Non-ECCはメモリにエラーチェック機能がない。 - CL – キャスレイテンシ
CASレイテンシは指示を受けてから開始するまでの時間のことで、同じメモリクロックの場合は CLの値が高ければ遅いということになるが、レイテンシは CASレイテンシをメモリクロックで除算した値のため、CASレイテンシだけでメモリ性能は判断できない。 - Dual Channel
Dual Channelに対応したマザーボードでは、同一規格・同一ロットのメモリを 2枚使用することで、メモリ のデータ転送速度を 2倍に引き上げることができ、単純に 2GBのメモリを 1枚搭載するより 1GBのメモリを2枚 Dual Channelとして搭載して方が同じサイズでもパフォーマンスが向上する。
DDR5は 1つの DIMMに 2つの 32bit チャンネルがあるため 、CPU-Z では 4 x 32 bit(Quad)になるが、一般的に DDR5は 4 x 32 bitが Dual Channel。
アプリケーションや OSが消費するメモリ量が搭載しているメモリサイズを上回ると、仮想メモリとしてメインメモリに蓄積されているデータの一部が SSD/ HDDに退避(スワップアウト)し、アクセススピードが低下するため、パソコンを快適に操作するには十分なメインメモリを確保しておいた方がよく、既存のパソコンを高速化させるにはメインメモリの増設が最も簡単な物理的手段になる。
ストレージ
主記憶装置(メイン メモリ )に対して、ソリッドステートドライブ(SSD)やハードディスクドライブ(HDD)などのストレージは 補助記憶装置 と呼ばれ、OSを含めたデータを保存するために使用する。
- SSD
SSD は フラッシュ メモリ(半導体 メモリ)が使用されているため 衝撃や振動に強く、シークタイムがないので HDD と比較して データへのアクセス速度が飛躍的に向上する。
2.5 インチの SSD は SATA 接続の NAND 型 フラッシュメモリで、SSD の黎明期には 書き換えの上限回数や記録方式(SLC / MLC / TLC)が 話題になったが、近年は メモリセルに3ビットのデータを記録する 安価な TLC のネックだった 速度や耐久性 が 技術向上により改善され 、SSD の大容量化もあって TLC を採用した製品が普及している。
- HDD
ハードディスクドライブ(HDD)は プラッタ(磁気ディスク)という円盤部分をモーターで回転させ、磁気ヘッドがプラッタ上を往復することでデータの読み書きを行っており、SSDよりも容量単価が低いため、データ保存用の大容量 ストレージ として利用されることが多い。
SSDの黎明期には通常の HDDにフラッシュ メモリを搭載し、フラッシュ メモリをキャッシュ(一時的な記憶域)として使用することで、HDD のボトルネックであるシークタイムを軽減する ハイブリットHDD(SSHD)も存在したが、SSDの容量単価が低くなった現在では販売されていない。
ストレージ のパーテーションを管理している MBR(Master Boot Record)は 32bitの制約により 2.2TBまでしか管理できず(2TBの壁)、 2TBを超えるディスクはパーティションスタイルを GPT(GUID Partition Table)にする必要があり、起動ディスクとして利用する場合はマザーボードの UEFI サポートと64Bit OSの環境が必要。
SSDには SATA接続のモデルと PCIeで接続するモデルがあり、PCIeに接続するモデルは通信プロトコルに NVMe(Non-Volatile Memory Express)が採用された M.2(インターフェイスの規格)での接続になる。
M.2は専用ソケットに設置するので、マザーボードが M.2ソケットをサポートしているか、通信プロトコル(SATA / NVMe)と合わせて確認が必要。
電源ユニット
電源ユニットは家庭用の AC電力(交流)を DC 電力(直流)に変換して電圧を下げており、変換時に電力を消費するため 変換率 が電源ユニットの性能を測る目安になる。
80PLUS は PC用電源ユニットの電力変換効率に関する規格で、80PLUSの認証を受けている製品は電力変換効率 80%以上が保証されている。
電源ユニットは表記されている電源容量だけで判断するのではなく、スペック表に記載されている 12Vに流れる電流(A)から電力(W)を算出して確認する。
GIGABYTE 500W → 12V x 36A = 432W
Corsair 850W → 12V x 70A = 840W
12Vの電力と定格出力はほぼ同じ数値になるが、製品によっては定格出力 620Wと表記していても実質的に 400W 程度の電源ユニットもある。
光学ドライブ
光学ドライブ(オプティカルドライブ)は DVD/ Blu-rayなどの光ディスクを再生する 5インチドライブで、以前はリカバリメディアやアプリケーションが CDや DVDで 配布されていたため必須のパーツだったが、現在はダウンロードや USBメモリなどに変わって光学ドライブの使用機会は減少し、自作用の PCケースでは 5インチベイの非搭載モデルが増えている。
UHD Blu-rayの再生については UHD Friendlyドライブのファームウェアダウングレードの手順 を参照。
PCケース
PCケースは静音性・冷却性・メンテナンス性・剛性などに特徴があり、耐久性のあるスチール製と熱伝導率の高いアルミ製がある。
選定のポイント
- MB のフォームファクタに適した大きさ
- 内部のエアフロー
- ドライブベイの数
- 電源ユニットの位置
- フロントパネルのインターフェイス
- デザイン
- 組み立てやすさや裏配線の可否
- CPUクーラーに簡易水冷を使用する場合は ラジエーターの設置位置
Operating System(OS)
自作パソコンを作成したら利用可能な状態にするため OSのインストールが必要で、Windows 10/ 11 は無料でインストール可能だが、プロダクトキーを購入してライセンス認証が必要で、Ubuntu/ Debianなどの Linuxは無償で利用できる。
グラフィックカード
グラフィックカード(グラフィックボード)は映像信号の入出力を扱うパーツで、NVIDIAの GeForce、AMD(旧 ATI)の RADEONがグラフィックの二大ブランドになっている。
GPU(Graphics Processing Unit)は本来 画像処理を行うプロセッサで、数百から千を超えるコアを搭載しているため処理能力が高く、グラフィックス以外のタスクを並列処理できる GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)という技術が開発されてからは、高負荷な処理が必要なアプリケーションで活用されるようになり、使用環境によっては非常に高いパフォーマンスを発揮できる。
選定のポイント
- GPGPU を使用する場合は Open CLか CUDAを選択
- パソコンの電力とグラフィックカードの消費電力を確認
- 使用可能な PCIe 電源ケーブルがあるか確認
- PCIe x 16 の空き スロットを確認
- 設置可能なスペースを確認
- 対応ブラケットを確認
代表的な GPGPUは NVIDIAの CUDA と OpenCL で、CUDAは NVIDIA独自のアーキテクチャのため、 TensorFlow GPU Support など CUDAを採用したソフトを使用する場合は、CUDAをサポートした NVIDIA のグラフィックカード が必要になる。
CPUクーラー
CPUは高温になるため CPUクーラーを使用して冷却する。
CPUを購入するとリテール品の CPUクーラーが付属していることが多いが、TDP(最大消費電力)の高い CPUや、CPUのオーバークロック時は冷却効果を高めるため大型の CPUクーラーや水冷タイプの CPUクーラーを使用する。
エアフロー
パソコンを稼働させると各パーツが発熱し ケース内部の温度が上昇するため、ケース背面のファンで 内部の熱せられた空気を排気しており、吸気と排気のバランスを考慮してケースファンを配置し、ケース内部の 空気の流れ(エアフロー)を作る。
吸気よりも排気が多いとケース内部は 負圧 になり、ケースの隙間から外気が内部に流入してくるため、ケース内にホコリが積もりやすい。
一方、排気よりも吸気が多いとケース 内部は 正圧 になり、ケースの隙間から内部の空気が外に流出するため負圧に比べケース内部のホコリの量は格段に少なくなるが、ケース内部を正圧にする場合は吸気と排気のバランスに注意が必要で、一般的には負圧が推奨されている。
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