スーツの基本と豆知識

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スーツのサイズ表記 と サイズバランス、メンテナンスの方法 や クリーニングの頻度 など 

現在の日本では ビジネススーツが 旧態依然としたワークスタイルの象徴のような扱いになっており、個性の尊重・働き方改革・企業のグローバル化 などで オフィスのカジュアル化が進んで スーツ離れが加速しているが、相手に不快感を与えないという点において シワのない美しいスーツが 未だ ビジネスシーンに欠かせないアイテムであることに変わりはない。

Index

スタイル

スーツのデザインは シングルブレストダブルブレスト があり、現在のビジネススーツは ノッチドラペル2釦 のシングルブレスト が標準仕様になっている。

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ビジネススーツはインフォーマルに分類される服装で、20世紀以降 ビジネスシーンでの国際標準のドレスコードになっているが、時代によって ラペル ( 下衿 ) 幅 や ゴージラインの高さ、ボタン位置などが変化している。

シングルスーツの丸いフロントカットはモーニングコートの影響を受けており、当初のモーニングコートがフロックコートのフロントカットを丸くし、カット部分にもデザインとして釦が配置されていたため、その名残りとして 現在もフロントカット部分に 留めない釦が付いている。
ダブルスーツ

ダブルブレストのスーツは 1930年代中期 ~ 50年代後期 と 1980年中期 ~ 1990年代後期 にかけて流行し、特に日本では 1980年代中期からのバブル期に ソフトスーツが人気を博した。
その後 国内ではアパレル業界が 何度か ダブルブレストのデザインを再燃させようと試みているが、流行には至らず 紳士服量販店でも取り扱いは少ない。

略礼服

略礼服は 業界が 簡易的な正装として定義した 日本独自のスタイルで、分類的には ビジネススーツと同じ インフォーマルになる。

ダブルスーツが流行していた当時に 業界が勝手に決めた 仕様 のため、当初は ダブルスーツが略礼服の標準スタイル として浸透し、1960年代以前の世代は ダブルスーツを着用している割合が多い。

生地を黒に染めるのはコストがかかり、黒さが増すほど高級な素材になることもあって 略礼服は「 黒いほど良い 」とされ、女性の和服と同じく年配者ほど 当時の標準 や 既定 にこだわる傾向がある。

ラペルのボタンホール(フラワーホール)

ラペルに付いている ボタンホールは 首の当たりまで 釦で留めていたものの名残りで、現在は デザイン化して ボタンホールに切れ込みが入っていないことも多い。
海外では第二次世界大戦以前は フォーマルな場だけでなく、仕事やプライベートでもブートニエールを付けていることも多かったようだが、大戦後はフォーマルなシーンで使用している人がいる程度で、現在はビジネススーツに社章をつけている人も少なくなっている。

ラペル部分のボタンホールは フランス語で ブートニエール、日本では フラワーホール と呼ばれており、日本でブートニエールというと釦ホールに飾る花、もしくは 花のピンを意味する。

ブートニエールは 1455年 英国の ランカスター家 と ヨーク家 の間で行われた 薔薇戦争 の事で、ランカスター家 が 赤薔薇、ヨーク家が 白薔薇 の紋章を付けた軍服を着用していたが、軍服が支給されない兵士は 敵味方を識別するために 赤薔薇・白薔薇 の飾りを作って服に付けていたのが起源と言われており、英国のヴィクトリア女王 は結婚して1年後の写真撮影の際、愛の証として夫のアルバートへ花を贈り、アルバートが衿に穴を開けて花を挿したことで ブートニエールがブームになったという逸話もある。

スーツのサイズ

スーツサイズには 体型号数 があり、体型はJ体 ~ E体で 横幅、号数は2号 ~ 9 号で 身長 を表しており、同じ体型・号数でも スタイル ( 型紙 ) によって サイズ展開は違ってくる。

日本産業規格 ( JIS ) 成人男子衣料サイズ : 体型区分
体型J 体JA 体Y 体YA 体A 体AB 体B 体BB 体BE 体E 体
ドロップ寸20cm18cm16cm14cm12cm10cm8 cm6 cm4 cmドロップなし
ドロップ寸ヌード寸法の 胸囲 から 胴囲を引いた値で 体型を算出する際の寸法で、体型 はドロップ寸(寸法差)で決められているが、既製服店の drop8 や drop6 という表記は JIS規格 ではなく メーカー独自の体型表示。
日本産業規格 ( JIS ) 成人男子衣料サイズ : 号数と身長
号数2 号3 号4 号5 号6 号7 号8 号9 号
身長155cm160cm165cm170cm175cm180cm185cm190cm

余談 レディーススーツのサイズ表記が 号数のみになっているは 体型を隠して 販売する 婦人服店の手法で、レディースのスーツにも 体型 と 号数はある。

サイズヌード寸法ジャケットサイズ
体型号数身長胸囲胴囲胸囲胴囲肩幅袖丈着丈
YA 体6号17592781049144.361.572
A 体5号17092801049244.360.070
AB 体3号16092821049444.957.066

AOYAMA URBAN SETTER サイズスペックより 既製服 は 体型が違っても 同じ胸囲の場合は 号数 を変えることで ほぼ同じような ゆとり量のサイズになる。

イージーオーダースーツの場合も スタイルごとに体型が登録されているが、J体 ~ E体まで すべての体型をサポートしているわけではなく、スタイルによって登録されている体型は違っており、一般的にインターナショナルやレギュラーと呼ばれるスタイルはサポートしている体型が多く、クラシコ や タイトスタイルなどは体型に制限があることが多い。

サイズ バランス

イージーオーダーの場合は 登録されたサイズ・デザイン から CAD を使用して型紙を作成するため、許容範囲を超えるサイズの指定 や デザインの指定は 基本的にできないので、フィッターは ユーザーの要望を聞きつつ ヌード寸法から 使用できるスタイル ( パターン ) を選択している。

ゆとり量

スーツに限らず 衣類には ゆとり量 が必要で、ゆとり量が少なければ タイトフィットに、多ければルーズフィットになる。 ゆとり量がないと 身体に密着したものになり、レディースは ポリエステル100% のストレッチ素材を使用した ゆとり量のないスーツが多いが、ウールなど ストレッチ性のない生地で ゆとり量がないスーツを作ると 動きづらいだけでなく 生地が常に引っ張られるため パンクの原因になる。 

標準サイズ

標準サイズ は 着心地 や サイズバランスを確認するための基準値。

胸廻 ( 上胴 )
胸廻 ≒ オーバーバスト ( OB ) - 18 cm 胸廻 ≒ ヒップサイズ - 2 cm
肩巾

肩巾 ≒ 胸廻 ÷2- ( 2 ~ 4 cm ) 胸廻 90cm 以下 ( 2 cm )・胸廻 96cm 以下 ( 3 cm )・胸廻 104cm 以下 ( 4 cm )
袖丈

袖丈 ≒ ( 裄丈 - ( 肩巾 ÷ 2 ))+ 3 cm 着丈- 14 cm で 着丈 と 袖丈の バランスを確認できる。
胴廻り ( 中胴 )

上衣の胴廻は 標準体 ( A体 ) の ゆとり量は 16 cm、痩身体 18 cm、肥満体 12 cm が目安。
上衣丈
上衣丈の標準 ≒ 総丈 ÷ 2

標準体型の場合 OB ( 腕を下ろした状態で 腕を含めたバストサイズ )とバストの差は 18cm 前後で、差が 20cmを超える場合は 三角筋 や 上腕二頭筋が発達していると考えられるため 胸廻りサイズを上げたほうがフィットしやすく、ヒップからバストサイズを引いた数値が4cmを超える場合は 臀部が発達していると考えられるため、胸廻りサイズを上げたほうが バランスが取れる場合が多い。

標準サイズから離れるほど スーツのサイズバランスが崩れ、大きい部分は 縦ジワ、小さい部分には横シワなどの症状がでる。

スーツのケア

スーツは 高級な生地ほど 耐久性がなく ポリエステルの混紡率に比例して 耐久性は高くなるが、一度 着用したスーツは 1週間ほど休ませるのが理想。

ウールなどの天然素材には 回復性 があるので、ウール素材の スーツは ブラッシング後に 太めのハンガーで形を整えて 休ませるのが基本。

木製ハンガー
ハンガーは スーツの肩巾に合った肉厚のものを使用して、着用後のスーツはブラッシング後 1日程度 風通しの良い場所で陰干しして湿気を飛ばす。 ハンガーは吸湿性のある木製のものが良いが、薄い木製ハンガーであれば 肉厚のプラスチック製ハンガーのほうが良く、
肩の傾斜がないタイプ や 肩先が太くないハンガーは 型崩れの原因になるため使用は避ける。
洋服ブラシ
洋服ブラシは表面のホコリを落とすだけでなく 繊維の中に入り込んだチリ や ホコリを取り除き、生地を整える効果がある。 エチケットブラシは表面の糸くず や ホコリの掃除には効果的だが 繊維の中に入ったホコリは取り除くことができず、生地によっては繊維を痛めてしまう可能性もあるので、スーツをケアする際にはブラシの使用を推奨。
スチーマー
ウールは吸湿・放湿で伸縮(ハイグラルエクスパンション)するため、スチーマーで水分を与えて繊維を一時的に飽和状態にすることでシワが伸び、自然乾燥すると本来の状態に復元する。 スチーマーでなく家庭用のスチームアイロンでも代用でき、スチームだけでシワが取れないようであれば 霧吹きで生地に水分を与え、当布をしてから軽くアイロンをかけると効果的。

スチーマーを使用した後は ハンガーに吊って1日程度は 風通しの良い場所で 乾燥が必要で、乾燥させずにワードローブへ入れてしまうと カビの発生 や パッカリング ( 生地表面が凸凹になる状態 ) の原因になる。 suits-021 ブラッシングは 隠れたホコリを出すような感じで スーツ全体を払うようし、ホコリが浮き出てきたら 生地の目に沿って大きなストロークで ホコリを払い飛ばすようにする。

アイロンをあてた箇所は 生地の毛羽が寝て アタリというテカリの原因になるので、アイロンを当てた後は生地の毛羽を起こすようにブラッシングする。

雨の日のケア

ウール には撥水効果があるため 素材が傷んでいなければ 軽く雨に降られた程度であれば、表面に付いた水滴を払えば良いが、生地が水分を吸ってしまった場合は 乾いたタオルなどで水分を吸収した後、肉厚のハンガーにかけて 形を整えてから 風通しの良い場所で乾燥させる。

スーツが生乾きの状態だと 雑菌が繁殖して臭気が発生するため、乾燥後も臭いが気になるようであれば 除菌・脱臭効果のあるスチーマー を使用後 ブラッシングで毛羽を整える。

除菌消臭スプレー ファブリーズ は 殺菌効果はあるものの 臭気に関しては 臭い成分を包み込んでいるだけで、表面に臭気を含んだ分子が付着した状態になるため、クリーニングに出した際 高圧プレスによって分子が破壊されると スーツが悪臭に包まれることになる。

クリーニング業界では ファブリーズによる 悪臭 のクレームが増加しており、プレスでファブリーズの分子が破壊されると クリーニング業者の人曰く「 この世のものとは思えない臭さ 」が発生するようなので、ファブリーズの使用には注意が必要。

夏場のケア

汗 は 皮脂 や 塩分を含んでおり 蓄積されると 生地にダメージを与えてしまうため、 濡れタオルなどで衣類に染み込んだ汚れを吸い取るように処理した後、ハンガーで形を整えて乾燥させてからブラッシングを行う。

ドライクリーニングでは 皮脂 や 汗に含まれる塩分など 水溶性の汚れは落ちず、汗を吸収した状態で ドライクリーニングに出すと生地を傷めることになる。

クリーニング

スーツの クリーニングは 勘違いが多く、着用状態にもよるが 酷い油汚れがない場合 ドライクリーニングは 多くても1ヶ月に1回ほどで良く、週に1~ 2回ほどしか袖を通さないスーツは シーズンオフに1回クリーニングに出す程度でも問題ない。

夏場は汗をかくため 多くの人が1 ~ 2週間に1回程度の割合でドライクリーニンに出しているが、汗を吸った状態でドライクリーニングに出すと 繊維に汗 や 皮脂の汚れが残るため、 黄ばみ・色あせ・異臭 の原因になる。
スーツは 上下で クリーニングの頻度が異なると 微妙に色が変わるため、 上下揃えてクリーニングする。
スーツの保管

クリーニングが仕上がったスーツは 防汚用のビニール袋を外し、肩巾にあった肉厚のあるハンガーに掛け直して保管する。 スーツをクリーニングのビニール袋に入れたままワードローブに保管すると 通気性が失われ カビが発生する原因になるので、ホコリなどを防ぎたい場合は テーラーバックのような 通気性のある衣類ケースを使用する。

汚れの種類

汚れに種類 には 水性油性があり、水性の汚れであれば 水 や 温水を使用しないと落ちにくく、油性の汚れは有機溶剤を使用しないと落とせないため、有機溶剤を使用するドライクリーニングでは 繊維の中に入っている汗 や 皮脂 など水溶性の汚れを 水洗いしたようには落とせない。

石鹸の主原料である 界面活性剤 は  水と馴染み易い部分と馴染みにくい部分があり、水に馴染みにくい部分が汚れに吸着し、表面張力の低下によって水中に汚れが浮かび上がろうとする性質を利用して洗浄が行われる。

一般的な洗濯用洗剤は 界面活性剤の性質を化学合成して洗浄力を強化した合成洗剤で、油性の汚れにも効果はあるものの 有機溶剤を使用したドライクリーニングと比較すると洗浄力は劣る。

クリーニングの種類

クリーニングは ドライクリーニングランドリーに大別され、その他に ウェットクリーニング特殊クリーニング がある。

ドライクリーニング

ドライクリーニングを使用せず 有機溶剤を使用したクリーニングで、洗濯表示では PF で表記されており、 Pパークロロエチレン・石油系溶剤を使用、F石油系溶剤 を使用したドライクリーニング。

パークロロエチレン ( パーク系 )
溶媒として利用されている テトラクロロエチレンを使用した 塩素系に分類される処理で 洗浄力は強力だが 溶剤に毒性があって 取り扱いが難しいため、パークロロエチレンを取り扱うクリーニング業者は全体の3割程度しかない。
石油系溶剤
アルカン・シクロアルカン ( ナフテン ) を主成分とした 工業ガソリンの クリー二ングソルベント ( ターペン ) を使用した処理で、パーク系と比較すると洗浄力は劣るものの デリケートな衣類にも使用できるため、P マークでも 石油系溶剤 で処理を行っている。

東京都環境局環境改善部 石油系混合溶剤の成分組成調査

ウェットクリーニング

改定された洗濯表示に追加された W マークで表しているクリーニングで、家庭での水洗いではなく 専門技術が必要な水洗い処理を行うクリーニング。

ドライクリーニングマーク ( P / F ) が付いている商品でも W が表示されていれば ウェットクリーニングで水洗いが可能。
ウェットクリーニングは ドライクリーニングでは落としにくい 水性の汚れを落とすことができるため、夏場のスラックスなど汗で汚れたものに適しており、近年は 汗抜きダブルクリーニングとして訴求している業者もある。

ウェットクリーニングは ドライクリーニング や ランドリーのような基準がないため、業者によって処理方法 や 技術が違っているなどの問題がある。

ランドリー

ランドリー は 一般家庭の洗濯と似た を使用するクリーニングで、温水を使用することで 水では落ちにくい汚れを落とすことができる。

オーダースーツと既製服

オーダースーツ は フルオーダーイージーオーダー   ( EO ) ・パターンオーダー  ( PO ) に大別されているが 明確な定義があるわけではなく、イージーオーダー と パターンオーダー は 曖昧で 取扱いショップによって仕様が大きく異なっている。

フルオーダー

採寸してから型紙を作成し生地を裁断、仮縫いをしてクセ取り や 体型補正を行うため、個人の身体にフィットしたスーツを仕立てることができる。 型紙の作成・生地の裁断が手作業になるほか 仮縫い や 体型補正を行うため、フィッターには専門技術が必要で 料金もスーツ上下で 15 万円 ~ と高額になる。

フルオーダーは 型紙 から起こすため デザインの自由度が高く、仮縫いもあるので フィット感も得られるが、良くも悪くもフィッターの技術次第で 仕上がりが変わる不確実さがある。
イージーオーダー

1980 年代に普及した CAD-CAMシステムにより 職人技 だったフルオーダーの技術をデータ化し、マーキング・延反・裁断を自動化することで 大幅なコストカットを図ったもの。 デザインと 基本的なサイズを入力することで自動的にグレーディングされ、フルオーダーで行われている体型補正 も登録されている範囲で可能になる。

既製服と変わらない価格で 生地 や デザインを選択でき、身体に合ったスーツを仕立てることができるが、生地に合わせたミシン調整などができず、パターン導入が遅い傾向があるため イノベーター・アーリーアダプター ・アーリーマジョリティ など流行に敏感な層には不向き。
パターンオーダー

既製服の体型・号数を自由に組み替えられるようにしたもので、生地 や デザインの選択ができるものもある。

上衣の着丈・袖丈 と 下衣の ウエスト と ヒップ のサイズが合えば、比較的 トレンドに近いスタイルのスーツも 作ることができるが、イージーオーダーに比べ自由度が低く、フィット感も既製服と変わらない。
既製服

サイズが体型 ( 横幅 ) と号数 ( 長さ ) で決まり 上下の組み替えが出来ない。 身体にフィットさせたオーダースーツとは異なり、ハンガーで吊った状態が最もきれいなシルエットになっている。

デザインから生産まで一貫行われるため 縫製にムラがなく 最新のトレンド商品を購入できるが、製品をサイズ調整を行うとバランスやシルエットが崩れる。

毛糸と生地

羊毛の成分は ケラチン というタンパク質で 表皮部分(スケール)と 皮質部分(コルテックス)から構成されており、コルテックス を構成する細胞は 二層構造で アルカリ や 酸、温度などに異なる反応を示す性質があり、成長速度も異なっているため クリンプ という組織が螺旋状に縮れた状態になる。 wool-001 うろこ状の スケール撥水性コルテックスは湿度60%を超えると放湿し 下回ると吸湿するという調湿性クリンプには伸縮性保温性断熱性 があり、この特性が衣類の素材としてウールが最適とされる所以になっている。

ウールは衣類として利用されてから 5000年以上の歴史があり、初期メソポタミヤ文明を築いた バビロニア の シュメール人 が着用している腰布は 羊毛を束ねて房のようにした毛織物で カウナケス と呼ばれている。

染色

生地の染色は トップ染め糸染め反染め の3種類があり、トップ染め・糸染め を 先染め、反染め を 後染め という。

トップ染め ( 先染め )
ウールトップの状態で染色する。
糸染め ( 先染め )
糸の状態で染色するため 糸は単色になる。
反染め ( 後染め )
 反物の状態で染色するため反物は無地になり、ウールとポリエステルでは染料が異なるため混紡素材は 2回染色が必要。

霜降りと呼ばれるグレーの生地は 黒と白のトップ染めされた繊維を合わせることで、濃淡のある微妙な色合いを出すことができる。

糸の種類

は繊維を撚り(より)合わせたもので、繊維に撚りをかけるとこで 均一性・収縮性・柔軟性・光沢などの効果が得られる。

(ヤーン [Yarn] )には 短繊維(ステーブル)を集めた わたに撚りをかけて長くした スパン糸と、長繊維(フィラメント)を数十本撚り合わせて 1本の糸にしたものが フィラメント糸があり、天然繊維の 綿・麻・羊毛 からできるのは スパン糸で、ナイロンやレーヨンなどの合成繊維のほか 天然繊維ではシルクのみが フィラメント糸 になる。
紡績するときに2種類以上の繊維を混ぜ合わせて紡績した糸が混紡糸で、紡績するときに 1種類の繊維で糸を作り、その後 他種類の糸と撚り合わせて作った糸を 交撚糸 ( こうねんし ) という。
梳毛糸 ( そもうし ) – ウーステッドヤーン
羊などの原毛から長い繊維 を取り出し 撚りをかけて単糸を作り、その単糸を撚り合わせて双糸にしたもの。 長めの原毛を梳く(すく) ことから 梳毛 といい、細くて糸の太さが均一で固く締まった感じを持つ 毛羽の少ない糸で、一般的なスーツ地で使用される糸。
紡毛糸 ( ぼうもうし ) – ウーレンヤーン

梳毛にかかりにくい短い繊維や毛糸屑などを一度繊維の状態に戻し、原料を混ぜ合わせ、撚りをかけて単糸にしたもの。 短い繊維を紡いでいく ことから 紡毛 といい、梳毛糸に比べて太く 表面の毛羽が多いのが特徴で ツイード や フラノなどが代表。
撚り

繊維を撚って 1本の糸にした状態が 単糸、 単糸を 2本 撚り合わせたものが 双糸で、糸に撚りをかける場合 単糸は通常 左撚り ( Z撚り ) 、双糸は右撚り ( S撚り ) になり、Z撚りは S撚り に比べて 撚りがきつくなる。

スパン糸の場合 通常 1インチ ( 2.54cm ) 間に 18 ~ 21 回ほど撚ってあり、撚りが18 回以下のものは 糸に柔らかさが出る 甘撚り、撚り回数を多くして シャリ感 や コシをもたせたものが  強撚糸 ( きようねんし ) になる。
糸の単位

糸の単位重さあたりの長さとして算出するものと、長さあたりの重さから算出する方法がある。

毛番手(メートル番手)
主に梳毛糸に対して使用される単位で、1000g(1kg)あたりの長さが1000m(1km)のものが 1番手で、1000g(1kg)あたりの長さが50,000m(50km)のものが 50番手。
デニール

絹糸(フィラメント糸)の太さを表す単位で、9000m(9km)あたりの糸の重さが 1g のものが 1 デニールで、9000m(9km)あたりの糸の重さが 10g のものが 10 デニール。
Super100’s

糸を構成している繊維の太さが 18~18.9ミクロンのものが Super100’s、糸を構成している繊維の太さが 15~15.5ミクロンのものが Super 150’s で、80番手 は 糸の太さが 17.7 ~ 19.1ミクロンなので、Super100’s は 80番手の糸とほぼ同じ。

天然繊維で 最も細い シルク は 11ミクロン、ウールでは 17 ~ 21 ミクロン 以下の細番手のもが ファインウール と呼ばれている。

ハイグラルエクスパンションと縮絨

ウール素材の生地は 調湿性があり湿度に応じて伸縮するが、吸湿して伸び 脱湿して縮む現象を ハイグラルエクスパンションといい、スーツなどの毛織物は ハイグラルエクスパンション があるため JIS 規格で サイズに許容範囲誤差が認められている

緩和収縮率が3%を超えるとスーツの場合は袖丈 や 着丈で1cm 以上の誤差が生じる可能性があるため、多くのスーツ地は織物の長さ や 幅を縮小して織り目を詰めることで、締まりがあり 緻密な風合いの生地にする 縮絨 ( スポンジング ) という加工をして緩和収縮率を下げている。

IWS法という試験法で測定された 緩和収縮率は トロピカル や サキソニーで4~6%、ギャバジンで6~8%になっている。
ハイグラルエクスパンション現象について(PDF)

スーツのルーツ

現在のスーツは 19 世紀中頃の正装だった フロックコートをカジュアル化した ラウンジジャケット が原型と言われており、当時はリゾート地などで着る完全なカジュアルだった。

スーツの歴史は 英国を中心に語られることがほとんどで、現在のスリーピースは 17 世紀のイングランド王 チャールズ二世が行った 衣服改革宣言に端を発している。

洒落男だったチャールズ二世が導入したスタイルは フランスの太陽王 ルイ 14世が宮廷服として導入したジュストコールを模倣したものだが、18 世紀頃には英国で乗馬用として発展したライディングコート ( ルダンゴト ) がトレンドになり、男性のモードは英国が牽引するようになる。 18 世紀から 19 世紀にかけてライディングコートが簡素化され、軍服の影響を受けつつ 機能的になった フロックコートが誕生して 宮廷服 や 軍服として定着する。

フロックコートはウエスト部分がシェイプされた フィット感のあるロングジャケットで、デザインはシングルブレストとダブルブレストがあり センターベントになっていた。

フロックコートは現在のスーツの上衣に相当するもので、防寒用にはフロックコートの上に羽織るオーバーフロックコートがあり、オーバーフロックコートは 基本形がシングルブレスト、フォーマルの場合はピークラペル、インフォーマルな場ではノッチラペルのものを着用していた。

19 世紀中頃には 当時のファッションリーダーでもあった ジョージ・スタンホープ 第6代 チェスターフィールド伯爵 が オーバーフロックコート や ラウンジジャケットをベースにした オシャレなオーバーコートを作り、その名を取って チェスターフィールド コート( チェスターコート ) として流行、現在もトップコートの定番として人気がある。

18 世紀末には乗馬しやすいようにフロックコートの前身頃をカットした テールコート( 燕尾服 ) が現れ、フロックコートの丈を短くした 乗馬用のジャケット ( スポーツコート ) が普及する。。

当時 イギリスで一大ブームとなったのが 中産階級 ( ブルジョアジー ) が貴族を模倣した ダンディズムで、そのファッションリーダーが平民出身の ボー・ブランメル 。 ブランメルは 綺麗な身なり 優雅な立ち居振る舞い 見事な話術 と ダンディズムを体現した存在で、テールコートを流行させた立役者と言われている。

19 世紀の中頃には テールコートが男性の夜会服 ( イブニングコート ) として定着、テールコートの前身頃を水平ではなく斜めにカットした スタイルが 朝の乗馬の服装 ( モーニングコート ) として人気を博し、当初はインフォーマルだったが 19 世紀末には正装になる。

19世紀の後期 普段のスタイルとして ブルジョアジーが着用したのが ジャケットと同じ生地 ( 共地 ) でベストとパンツを揃えた ラウンジスーツ で、シングルブレストのボタン位置は高めだが、ダブルブレストのスタイルもあり 現代のスーツに近いスタイルが誕生する。

当時のイギリスでは 喫煙の習慣が広まり、晩餐会ではテールコートを着用し 食事の後 喫煙室などで煙を楽しむために スモーキングジャケットへ着替えるようになって、ラウンジスーツとは別にスモーキングジャケットがファッション化。 英国王 エドワード七世 の 濃紺ジャケットに黒のトラウザーズ、ボウタイ(蝶ネクタイ)というスタイルが ディナージャケット(タキシード)として流行し、後に黒のタキシードが正装として認知されるようになる。
参考:ハーディ・エイミスのイギリスの紳士服

日英同盟・英仏協商・英露協商 を締結してピースメーカーと呼ばれる外交手腕を発揮し、国民にも愛されていた エドワード 7 世は ファッション関連の逸話も多く、皇太子 ( プリンス・オブ・ウェールズ ) 時代からグレンチェックの服を愛用したことから、グレンチェック柄が プリンス・オブ・ウェールズ チェックと呼ばれたり、ウエストバンドがあるノーフォークジャケットを好んで着用したことから 英国で流行したり、緑の羽根のチロリアンハットを被った写真が掲載されると 同じような帽子が飛ぶように売れたりと 英国紳士に多大な影響を与えていた。

ベストの一番下の釦を外すようになったのは エドワード7世 の「  一番下の釦を外したままのほうが着やすいし エレガントでもある 」という一言に端を発し、英国紳士の間で ベストの一番下の釦を留めないスタイルが流行したものが定着したと言われている。

軍服との関係

スーツの起源とされているフロックコートは フォーマルウェアであると同時に 軍服としても利用されており、宮廷服のスタイルとは別に 機能性を重視した戦闘服として進化していく。

英国を代表するブランド バーバリーの創業者 トーマス・バーバリーは 耐久性・保温性に富んだ 綾織の ギャバジンを開発し、防水加工を施したギャバジンを使用した軍用コート タイロッケンコートを制作。 第一次世界大戦では 陸軍が塹壕(Trench)で使用するため タイロッケンコートをベースにした トレンチコートが誕生し、この軍用コートがファッション化して現在では定番化している。

メタル釦でダブルブレストの リーファージャケットは 1800 年代の 英国海軍のガンボート ( 砲艦 ) HMS Blazer の 艦長が乗組員に揃えたことが流行して ブレザー と呼称されるようになったと言われており、この出来事が後に海軍の制服としてセーラー服の支給へとつながっていく。

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