Googleは検索や地図、メールに加え、AIサービスを支えるために膨大な個人情報を収集しており、その利用がプライバシーを脅かす大きな懸念となっています。
Googleが収集している情報の種類

Googleのサービス利用時には、規約とプライバシーポリシーへの同意が必須です。
プライバシーポリシー には「収集する情報には、ユーザーが作成するコンテンツ、利用するアプリやサービス、購入した商品、決済に使用した支払い方法などが含まれる」と明記されており、検索履歴や位置情報にとどまらず、決済や利用端末に関するデータまで収集の対象となります。
Googleが収集する情報は単体で扱われるのではなく、アカウント情報と結びつけられることで精緻なプロファイルを形成します。
検索履歴や YouTube視聴履歴はログイン状態に関わらず Cookieや広告IDを介して同一利用者と識別され、デバイスの識別子や IPアドレスは複数端末を関連付けます。さらに Playストアや Google Payの利用履歴は購買傾向を示すデータとして加わり、分散した情報が統合されて「Googleアカウント」として管理されています。
収集データの利用方法とAIの関わり
統合された利用者データは、広告配信の最適化や検索結果のパーソナライズだけでなく、AIサービスの基盤としても利用されています。個人の行動履歴や購買情報が学習や出力に反映されることで利便性は高まりますが、その裏で情報操作やプライバシー侵害の懸念も指摘されています。
プロファイリング
Googleは検索履歴、位置情報、YouTubeの視聴履歴、端末識別子、さらには決済情報を相互に関連付け、個人ごとの詳細なプロファイルを形成します。
プロファイルには年齢層や居住地域、関心分野、購買傾向に加え、世帯収入や住宅所有状況などの経済的属性が推定値として付与され、利用者本人が入力していない情報まで追加されており、アカウントと結び付いた状態で特定の個人を識別可能な情報になっています。
たとえ Googleアカウントに氏名や生年月日を偽って登録しても、決済情報からは実名が特定され、スマートフォンの端末識別子を通じて電話番号も紐づけられます。さらに位置情報の収集によって居住地域や生活圏が推定されるため、Googleのサービスを利用する以上、匿名性を保つことは事実上困難です。
広告ターゲティング
Googleの収益構造の中心は広告であり、広告を出稿するクライアントは効率的にターゲットになるユーザーへのリーチを求めています。Googleは、膨大な個人情報から作成されたプロファイルを活用し、特定の属性や興味に合わせて広告を最適化できる仕組みを主要な強みの一つとしています。
検索履歴や閲覧履歴から関心分野を特定し、YouTubeの視聴履歴や Playストアでの購入履歴から購買傾向を推定することで、広告は利用者ごとに最適化されます。
こうした仕組みによって広告の精度は高まりますが、利用者は自分の行動や嗜好がどの程度まで分析されているかを確認できず、透明性の欠如が問題視されています。さらに、広告主や第三者がこうしたターゲティングを悪用すれば、詐欺的な広告や誘導が「自分に合った広告」として表示されるリスクもあります。
さらに問題なのは、Googleが広告内容を十分に審査していない点です。実際には金融詐欺やマルウェア配布につながる広告が検索結果や YouTubeに掲載された事例があり、精緻なターゲティング機能と組み合わさることで、利用者が詐欺広告に直面するリスクは一層高まっています。
同様の問題はX(旧Twitter)や LINEでも報告されています。こちらもユーザーのプロファイルを利用した広告配信が行われていますが、詐欺広告や虚偽情報を含む広告が掲載され、利用者が被害に遭うケースが後を絶ちません。Googleと同様に、広告が精緻なプロファイルを基盤としているにもかかわらず、不正広告が配信された場合の責任所在は不明確なままです。
Googleは不正広告を禁止し、自動検出と人力審査を組み合わせて削除していると説明しています。しかし現実には金融詐欺やマルウェアにつながる広告が検索結果やYouTubeで配信され続けており、実際の被害が発生しています。
各国の規制当局も対策の不十分さを指摘しており、Googleは「数十億件を削除した」と実績を強調する一方で、利用者が安全にサービスを利用できる仕組みを根本から改善する姿勢は示せていません。さらに透明性レポートに関しても、広告収益維持を優先するあまり 実態を正確に反映していない可能性 が指摘されています。
AI概要への利用
Googleの AI概要は、利用者の検索履歴や閲覧データを反映して回答を生成するため、提示される情報が特定の方向に偏る危険性があります。これは利用者が見たい情報だけを与えられる「フィルターバブル」を強化し、現実との乖離を生み出す要因となります。
さらに、AIが自分を理解しているかのような自然な出力は、利用者に「AIに把握されている」という錯覚を与えやすく、判断の主体を曖昧にします。加えて、回答内にスポンサーサイトが組み込まれることで、広告と情報の境界が不明確になり、検索結果が中立性を失う懸念も高まります。
AI概要は、自分のことを熟知している有能なアシスタントのように見えますが、発言に責任はなく、回答の出力プロセスも不透明です。結果として、Googleによる恣意的な誘導や誤情報の拡散につながる危険性が高く、利用者が判断を誤る要因となり得ます。
個人情報が悪用された場合のリスク
一度漏洩した個人情報はさまざまな形で二次利用され、被害が拡大する特性を持っており、なりすましや詐欺行為に悪用される可能性もあります。
過去に発覚したプライバシー事例
国際的な規制と法的枠組み
Googleのようなグローバル企業による個人情報収集は、各国で定められたプライバシー規制の対象となっています。代表的なものに、欧州連合(EU)の「一般データ保護規則(GDPR)」、米国カリフォルニア州の「消費者プライバシー法(CCPA)」、日本の「個人情報保護法」などがあります。
GDPRは利用者の同意取得、データの利用目的の明確化、忘れられる権利などを規定し、違反時には巨額の制裁金が科されます。CCPAは米国内での利用者権利を強化し、データの開示請求や販売拒否の権利を認めています。日本の個人情報保護法も、第三者提供の制限や国外移転の規制を設けています。
ただし、Googleのような大規模プラットフォームは、規制の適用範囲を超えてデータを組み合わせて利用しており、完全に抑止できていないのが現状です。
各国の規制には統一性がなく、利用者が国境をまたいでサービスを利用する場合、十分な保護が及ばないケースもあるため、個人情報の国際的な流通に対しては、各国規制の整合性を確保することが今後の課題とされています。
個人情報を守るための対策
Googleのサービスを利用する以上、個人情報の収集を完全に避けることはできません。しかし、アカウント設定の調整や利用方法の工夫、さらには環境を切り替えるといった段階的な対策を取ることで、プライバシーリスクを大きく軽減できます。
ただし、Googleの場合、利便性とプライバシー保護はトレードオフの関係にあり、利便性を優先すればプライバシーが侵害され、逆にプライバシーを重視すれば利便性が損なわれます。
Googleアカウント設定
Googleはプライバシーに関する問題が指摘されるたびに設定項目を追加してきたので、アカウント設定を見直すことで、検索履歴や位置情報など収集されるデータを一定程度抑制できます。しかし、データ収集を完全に止めることはできず、拒否したデータが別の手段で収集されている場合もあります。
Googleアカウントでデータ収集を抑制するには、Googleアカウントの管理画面 を開き、左サイドパネルから[データとプライバシー]で、[履歴の設定]で「ウェブとアプリのアクティビティ」や「YouTubeの履歴」をオフにし、[パーソナライズド広告]を「マイアドセンター」から無効化します。
複数アカウントの利用
Googleアカウントは無料で複数作成できるため、用途ごとにアカウントを使い分けることで収集されるデータを分散させることができます。たとえば、仕事用と個人用を分けて利用すれば、検索履歴やアプリ利用履歴が1つのアカウントに集中するのを避けられます。ただし、Googleは端末識別子や IPアドレスをもとに同一利用者を推定できるため、同じデバイスで複数のアカウントを使用しても効果は限定的です。
より実効性を高めたい場合は、デバイスごとに使用するアカウントを変更することです。ただ、この方法ではクラウドサービスの利点であるデータ同期が大きく損なわれます。
Gmailは Thunderbirdなどのアプリを使用して取り込めますが、クラウドストレージはサードパーティ製のアプリを使用して同期が必要になるなど、作業や設定が煩雑になります。
De-Google環境への移行
Googleはサービスを[無償]で提供して利用者の依存度を高めています。視点を変えると、有償アプリの料金と同等の価値がある個人データが収集されているとも言えます。
そのため Googleサービスへの依存度を下げる De-Google環境への移行は、機能の制限や有償化などの痛みを伴うものが少なくありません。
無償で簡単に実行できるのは、ウェブブラウザの変更と検索エンジンの変更です。
Google Chromeと Google検索は、データ収集の要でもあるので、使用を避けるだけで収集される個人データを抑制できます。
備考
日本では、個人情報の収集や活用に関する社会的な議論が十分に深まっていないとの指摘があります。Googleのような大規模プラットフォームは、検索や位置情報、決済データまで幅広く収集し、利用規約への同意を通じて正当化しています。また、法執行機関や政府は必要に応じて情報開示請求を行えるため、治安維持の一環として活用される一方で、利用者にとっては監視的な側面を持つことが懸念されています。
同様に、国内で広く利用されているLINEも膨大な個人情報を収集しますが、セキュリティ体制やデータ管理の詳細が十分に公開されておらず、外部から検証しにくい状況にあります。
こうした事例は、利便性を前提とした無償サービスの利用が、透明性や説明責任の不足と表裏一体であることを示しています。利用者が主体的にリスクを把握し、プライバシー保護の観点からサービスを選択することが求められています。
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