LineageOS for microGのインストール手順

LineageOS for microG(リネージュオーエス フォー マイクロジー)は、LineageOSに microGを実装したオープンソースのカスタムROMで、Googleサービスに依存せず必要な機能を代替できる Android代替OSです。

LineageOS for microGの概要

Androidはオープンソースとして提供されていますが、実際の運用では Google独自のAPIやサービスに依存しており、多くのアプリは「Google Play開発者サービス」を前提に設計されています。
Google Play開発者サービスの代替として、オープンソースで開発されているソフトウェア群が microGで、Googleサービスを利用せずに位置情報取得、プッシュ通知(GCM/FCM)、認証APIなどの基本機能をアプリに提供します。

LineageOS for microGは、LineageOSに microGを組み込んでおり、Googleサービスに依存せず Androidデバイスを利用できるため、 プライバシーを重視するユーザーや、Googleサービスを最小限に抑えたいユーザーに適しています。また、不要なアプリや広告を排除した軽量な構成で、古いデバイスの再活用やセカンドデバイスでのアプリ検証環境にも適用できます。一方で、デバイスによってはカメラや指紋認証などのハードウェア機能が制限される場合があり、FeliCaや一部の決済サービスには非対応です。

用語解説

LineageOSは、Android Open Source Project(AOSP)を基盤として開発されているオープンソースのカスタムROMです。2016年に開発が終了した「CyanogenMod」の後継としてコミュニティにより引き継がれ、継続的に開発されています。
商用端末に搭載される純正 Androidと異なり、不要なアプリやメーカー独自のカスタマイズを含まず、軽量で自由度の高い環境を提供することを目的としています。
Googleサービスを含まない状態で提供されるため、利用者は GApps(Google Apps)を追加するか、microGのような代替手段を導入して環境を整える必要があります。

AOSPは、Googleが主導して公開している Androidのオープンソース版プロジェクトです。スマートフォンの基本OS部分(ホーム画面、設定アプリ、システムライブラリなど)が含まれ、誰でも自由に取得・改変・利用できます。
AOSPは「純粋な Androidの基盤」と位置づけられ、Pixelや Samsungなど各メーカーの独自機能はこの AOSPをベースに追加・改変されています。カスタムランチャーや独自OS(LineageOSなど)も、このAOSPを基に開発されています。

機能と特長

  • LineageOSをベースに、microGを標準で実装
  • 毎月セキュリティパッチを配信(一部の端末では配信が遅れる場合あり)
  • OTA(Over The Air)方式によるアップデートに対応
  • オープンソースで開発
  • Googleサービスを利用せずに通知・位置情報・認証機能を代替可能

ファームウェアの書き換えを行うため、メーカーや販売元のサポート対象外となり、インストール作業に失敗するとデバイスが文鎮化(ブリック化)するリスクがあります。

アプリ情報

開発元

LineageOS for microG Project

開発元の拠点

グローバル

公式サイト

https://lineage.microg.org/

ダウンロードページ

https://download.lineage.microg.org/

ベースOS

Android Open Source Project(AOSP)

提供形態

オープンソースソフトウェア(OSS)

ライセンス形態

オープンソースライセンス(Apache License 2.0、GPLv2を中心に適用)

サポートデバイス

LineageOS for microGは、SIMロックが解除されている Google・Motorola・OnePlus・Samsung・SONY・Xiaomiなどのグローバルモデル(SIMフリー版)をサポートしています。ただし、サポートしているメーカーでも対応モデルは限られているため、対応機種の詳細は、LineageOSの 公式サポートデバイス一覧 を参照してください。

インストールの手順

本稿の手順では Google Pixel 6aを使用しています。Google Pixel は AOSP に準拠したグローバルモデルで、販売地域による仕様差がほとんどありません。Google製デバイスであるにもかかわらず、ブートローダーのアンロックが容易で、カスタムROMのサポートが整っているため、De-Google OS導入に適しています。

ダウンロード

LineageOS for microGをインストールするモデルに応じて、公式サイトのサポートデバイス一覧から ROMイメージと対応するリカバリイメージ をダウンロードします。
ただし、インストールガイドは LineageOSの公式サイトを参照します。

eOS-001

Androidの[設定]から[デバイス情報]を開き、[モデル番号]を確認します。

Lineage OS 001

LineageOSの公式 サポートデバイスリスト からモデル番号を探してクリックします。

LineageOS for microG 001

デバイスの詳細ページでコードネームをコピーします。

LineageOS for microG 002

LineageOS for microGのデバイスリスト で、コピーしたコードネームを検索して、抽出されたフォルダをクリックします。

LineageOS for microG 004

最新バージョンはページ下部にあるので、リカバリイメージ(.img)・パーティションファイル(.img)・OSのパッケージファイル(.zip)をダウンロードします。

LineageOS for microG 005

ダウンロードしたイメージファイルと LineageOS for microGのパッケージファイルは、ターミナルを開くディレクトリと同じ階層に配置してください。なお、フルパスを指定すれば別のディレクトリからでも実行可能です。

通常は platform-toolsフォルダ内にコピーしますが、環境変数に platform-toolsのパスを追加していれば、デスクトップなど任意の場所からコマンドを実行できます。

ADBのセットアップ

ADB(Android Debug Bridge)は、パソコンと Androidデバイスを USBケーブルや Wi-Fiで接続し、コマンドラインから操作できる開発者向けツールです。
詳細な手順については、ADBのセットアップ方法 を参照して下さい。

ADBセットアップ後の確認事項
  • パソコンに Androidデバイス用の USBドライバがインストールされているか
  • USBドライバをインストール後にパソコンを再起動したか
  • デバイスの[開発者オプション]で[USBデバッグ]は有効になっているか
  • ターミナルから[adb]コマンドで Androidデバイスにアクセスできるか

ブートローダーのアンロック

LineageOS for microGを書き込むため、ブートローダーのロックを解除します。操作はターミナルからコマンド入力で行うため、ADBのセットアップ が完了し、パソコンから Androidデバイスにアクセスできる状態であることが前提です。

Lineage OS 005

LineageOSのデバイス詳細ページで[Guides]の[Installation]を開きます。

Lineage OS 006

インストールガイドが表示されるので、翻訳して必ず確認してください。特に Androidのバージョンには注意が必要です。

デバイスの Androidバージョンが LineageOS for microGの対応バージョンより新しい場合、正常にインストールできない可能性があります。Pixelは最新バージョンの配信が早いため、タイミングによっては LineageOS for microGよりも新しいバージョンが搭載されていることがあります。
その場合、Pixelであれば Android Flash Tool を使用して Androidのダウングレードしてください。その他の主要メーカーについても、公式ファームウェアが提供されている場合は、ダウングレードあるいはアップグレードを行う必要があります。

Lineage OS 008

アンロックのコマンドはデバイスによって異なるため、インストールガイドを進めて[Unlocking the bootloader]で、手順とコマンドを確認します。

ADB 023

環境変数に platform-toolsのパスを追加していない場合は、platform-toolsフォルダ内でコンテキストメニューからターミナルを開きます。

eOS-011

ターミナルに下記のコマンドを入力し、[Enter]キーを押します。

adb reboot bootloader

インストールガイドには[adb -d reboot bootloader]のコマンドが使用されていますが、 -d オプションは、USBで接続されているデバイスを明示的に指定するものです。
複数のデバイス(USB接続とWi-Fi接続の両方など)が同時に認識されている場合に使用するもので、通常は[adb reboot bootloader]を使用して問題ありません。

iodeOS 020

Fastboot Modeが起動します。

eOS-012

Fastboot Modeで正しく認識・接続されているか確認するため、ターミナルに下記のコマンドを入力し、[Enter]キーを押します。
デバイスが認識されていれば、シリアル番号が表示されます。

fastboot devices
eOS-013

インストールドキュメントに記載されているブートローダーのアンロックコマンドを入力し、[Enter]キーを押します。

fastboot flashing unlock
iodeOS 012

デバイスがブートローダーのロック解除画面になるので、音量ボタンでメニューを移動し、[Unlock the bootloader]を選択して、電源ボタンで確定します。

iodeOS 013

ブートローダーがアンロックされたら、[Start]を選択した状態で電源ボタンを押します。
Androidが起動して初期セットアップが開始するので、セットアップ(すべての設定をスキップ可)を完了させます。セットアップ後に[開発者オプション]を表示して、[USBデバッグ]を有効にします。

LineageOS for microGのインストール

ターミナルを使用して、リカバリイメージをフラッシュし、その後に LineageOS for microGの ROMパッケージをデバイスにインストールします。

インストール前の確認事項
  • Androidのバージョンは要件に適合しているか
  • Androidデバイスのブートローダーはアンロックされているか
  • デバイスの Googleアカウントは削除しているか
  • アンロック後、セットアップを完了して USBデバッグを有効にしたか
  • パソコンに USB接続した際、USBデバッグの許可ダイアログが表示された場合に承認したか
  • 使用するデバイスに適合したリカバリイメージと LineageOS for microGの ROMパッケージを公式サイトからダウンロードしているか
  • ダウンロードした イメージファイルや ROMパッケージは、ターミナルを開くディレクトリと同じ階層に配置しているか
Lineage OS 009

リカバリに使用するファイルはデバイスによって異なるため、LineageOSのインストールガイドで[Flashing additional partitions]を必ず確認してください。

eOS-016

ターミナルを開き、下記のコマンドを順番に実行して、デバイスが認識されているか確認します。

adb reboot bootloader
fastboot devices
LineageOS for microG 006

インストールガイドの[Flashing additional partitions]で確認したコマンドを入力して[Enterキー]を押します。

fastboot flash boot lineage-22.2-20250904-microG-bluejay-boot.img
LineageOS for microG 007

同じ要領で必要なファイルをフラッシュします。

fastboot flash dtbo lineage-22.2-20250904-microG-bluejay-dtbo.img
Lineage OS 014

インストールガイドの[Installing Lineage Recovery using]で、リカバリイメージをフラッシュするコマンドを確認します。

LineageOS for microG 008

[Installing Lineage Recovery using]で確認したコマンドを入力して[Enterキー]を押します。

fastboot flash vendor_boot lineage-22.2-20250904-microG-bluejay-vendor_boot.img
eOS-020

リカバリイメージを書き込んだら、デバイスの音量ボタンでメニューを[Recovery Mode] にして、電源ボタン押します。

Google Pixelで[Recovery Mode]を選択すると、「No command」と表示されることがあります。これはエラーではなく通常の挙動です。
この画面が表示されたら、[電源ボタン]を押しながら[音量Upボタン]を一度押す と、リカバリーメニューが表示されます。

Lineage OS 015

LineageOSのリカバリモードが開いたら、[Factory reset]を選択して電源ボタンで確定します。

Lineage OS 016

[Format data/ factory reset] が選択された状態で電源ボタンを押します。

Lineage OS 017

[Format data]を選択して電源ボタンを押し、ユーザー領域をフォーマットします。
画面下のログに「Data wipe complete.」と表示されたら、左上の矢印をタップしてメインメニューに戻ります。

ログに「metadata」パーティションに関するマウントエラーが表示されることがあります。これはデバイスに metadataパーティションが存在しない場合などに出る一般的なメッセージで、致命的なエラーではなく、通常は無視して問題ありません。

Lineage OS 018

メインメニューで[Apply update]を選択して、電源ボタンを押します。

Lineage OS 019

[Apply from ADB]を選択して電源ボタンを押すと、画面が[ADB Sideload]に切り替わります。

LineageOS for microG 009

ターミナルに[adb sideload]+[LineageOSのパッケージファイル名]を入力して、[Enter]キーを押します。
処理が完了すると、ターミナル表示は 47%で停止しますが、残りの処理はデバイス側で進行しています。

adb sideload lineage-22.2-20250906-nightly-bluejay-signed.zip

何らかの理由でadbが切断してsideloadが実行できない場合は、リカバリモードで[Reboot system now]を選択して再起動してください。フォーマット後は OSが消去されているため、通常のAndroidは起動せず、Fastboot Modeに戻ります。
[fastboot devices]で接続を確認してください。シリアル番号が表示されたら、リカバリイメージや ROMのフラッシュ作業を再度実行してください。
また、再起動時にはキャッシュ構築やパーティションの最適化が行われるため、処理に10~20分程度かかる場合があります。

Lineage OS 021

LineageOSのインストールが完了するとリカバリの再起動を求められるので「Yes」を選択して電源ボタンを押します。

Lineage OS 022

リカバリが再起動してメインメニューが表示されたら、[Reboot system now]を選択して電源ボタンで確定してください。

Lineage OS 023

LineageOSの初期セットアップ画面が開いたら、USBケーブルを外してインストール完了です。

LineageOS導入済みデバイスへのインストール

LineageOS for microGは、LineageOSに microGを組み込んだカスタムROMですが、インプレースアップグレード(上書きインストール)は不具合が発生する原因になるため、リカバリ画面でフォーマットしてからインストールしてください。

インストール前の確認事項
  • デバイスの Googleアカウントは削除しているか(Gapps導入時)
  • [開発者向けオプション]を表示し、[USBデバッグ]を有効にしたか
  • パソコンに USB接続した際、USBデバッグの許可ダイアログが表示された場合に承認したか
  • 使用するデバイスに適合した LineageOS for microGの ROMパッケージを公式サイトからダウンロードしているか
  • ダウンロードした ROMパッケージは、ターミナルを開くディレクトリと同じ階層に配置しているか
eOS-016

ターミナルを開き、下記のコマンドを順番に実行して、デバイスが認識されているか確認します。

adb reboot bootloader
fastboot devices
eOS-020

ブートローダーが起動したら、デバイスの音量ボタンでメニューを[Recovery Mode] にして、電源ボタン押します。

Lineage OS 015

LineageOSのリカバリモードが開いたら、[Factory reset]→[Format data/ factory reset] →[Format data]を選択して、ユーザー領域をフォーマットします。

Lineage OS 018

メインメニューで[Apply update]を開き、[Apply from ADB]を選択して電源ボタンを押すと、画面が[ADB Sideload]に切り替わります。

LineageOS for microG 010

ターミナルに[adb sideload]+[LineageOS for microGのパッケージファイル名]を入力して、[Enter]キーを押します。

adb sideload lineage-22.2-20250904-microG-bluejay.zip
Lineage OS 021

LineageOSのインストールが完了するとリカバリの再起動を求められるので「Yes」を選択して電源ボタンを押します。

Lineage OS 022

リカバリが再起動してメインメニューが表示されたら、[Reboot system now]を選択して電源ボタンで確定してください。

Lineage OS 023

LineageOSの初期セットアップ画面が開いたら、USBケーブルを外してインストール完了です。

備考

LineageOS for microGは、Googleに依存せず LineageOSを実用レベルにしたシンプルな OSです。
類似のカスタムROMには、トラッキングや不審な通信をブロックできる「iodéOS」や、Googleのクラウドアプリの代替としてMurenaを実装している「/e/OS」などがあり、いずれもLineageOSをベースにmicroGを組み込んだフォークです。

LineageOS for microGは Googleサービスを排除しつつも、必要な機能を補完して日常利用が可能な環境を提供する点に特化しており、プライバシーを意識しながらもシンプルな構成で利用したいユーザーに適しています。

更新履歴

  • 2025-09-15:サイトリニューアルに伴い、記事を再編集
  • 2024-09-29:初版公開

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