Torでアクセスする闇サイト

闇サイトはディープウェブに属し、通常の検索エンジンや一般的なブラウザでは到達できず、匿名性を利用した違法取引や犯罪関連の情報交換が行われています。

ウェブの階層構造と闇サイト

インターネットの玄関口とも言える検索エンジンでは、検索すると膨大なウェブサイトが表示されますが、インデックス化されるのは公開性を前提とした領域の中でも一部に過ぎません。その背後には検索エンジンから見えない膨大な情報空間が存在します。

表層ウェブ・深層ウェブ

ウェブサイトは、検索エンジンで表示されるサーフェスウェブ(表層ウェブ)と、表示されないディープウェブ(深層ウェブ)に分けられます。

サーフェスウェブはニュースサイトや企業ページ、SNSなど一般公開を前提とした領域で、日常的に閲覧されるウェブページが該当します。全ウェブサイト全体の約10〜20%にすぎないと推定されていますが、正確な割合は不明です。

ディープウェブには、検索エンジンがインデックスしない会員制サイトや学術データベース、医療情報、金融機関のオンラインサービスなどが含まれ、公開性は低いものの正規の業務や研究に利用されています。ディープウェブは検索エンジンからは不可視ですが、研究・業務に不可欠な情報資源が多く含まれており、「闇」ではなく「非公開情報領域」という性格が強いのが特徴です。

検索エンジンは、ウェブページを自動巡回するクローラーによって情報を収集し、インデックス化されたものだけが検索結果に表示されます。しかし近年は、検索結果の最適化や AIによる要約表示が導入されたことで、インデックス化されるウェブサイトの範囲は縮小傾向にあります。また、インデックス化の縮小は、AI導入による処理負荷や電力コストの増加が影響しているとの指摘もあります。

闇サイトの特徴と位置づけ

闇サイトは、ディープウェブの中でも匿名化技術を利用して運営される特殊な領域(ダークウェブ)に属します。
アクセスには専用の仕組みが必要で、管理者や利用者の特定が困難です。この匿名性が、違法取引や犯罪利用の温床となる一方で、内部告発や表現規制の回避といった正当な利用に結び付く場合もあります。

ダークウェブと闇サイトは混同されることが多いものの、厳密には異なる概念です。
「ダークウェブ」は、Torなどの匿名化技術を利用しないとアクセスできない深層ウェブの一部を指します。一方、「闇サイト」はダークウェブ上に存在する匿名性の高いウェブサイトの俗称であり、違法取引や犯罪利用と結び付けて用いられることが多い名称です。
そのため正確には、ダークウェブという空間の中に闇サイトが位置づけられる関係にあります。

Torによるアクセス

ダークウェブに存在する闇サイトへ到達するには、通常のブラウザではなく、通信経路を匿名化するために設計された専用の仕組みが必要です。その代表的な手段が「Tor」で、世界的に最も広く利用されています。

Torの仕組み

Tor(The Onion Router)は「オニオンルーティング」と呼ばれる仕組みによって通信を匿名化します。通信データは多層に暗号化され、複数の中継サーバ(リレー)を順番に経由することで、送信元を隠したまま通信が行われます。

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Tor公式サイトより

データは3重に暗号化され、ランダムに選ばれた3つのリレーを経由します。
最後のサーバである出口ノードで暗号化が解除され、通常のインターネットに接続されます。この仕組みにより、接続先のWebサーバには出口ノードのIPアドレスのみが記録され、利用者の本来の接続元は匿名化されます。

Torブラウザの仕組み

Torブラウザは、Firefoxをベースに開発された専用ブラウザで、標準でTorネットワークを利用するよう設計されています。ユーザーがWebサイトへアクセスすると、通信は自動的に Torネットワークを経由し、複数のリレーを通過して匿名化されます。
さらに、ブラウザ内部にはトラッキング防止機能や指紋採取対策が組み込まれており、Cookieや閲覧履歴も終了時に削除される仕組みになっています。そのため、一般的なブラウザよりも高い匿名性を確保しながら、ダークウェブ上の闇サイトや通常のWebサイトに接続することが可能です。

オニオンランドの概要

オニオンランドとは、Torネットワーク上に存在する「.onion」で終わるドメインを持つウェブサイト群を指す呼称です。通常の検索エンジンには登録されず、Torブラウザなどの専用環境を通じてのみアクセスできます。ここには掲示板や個人ブログ、ファイル共有サービスなど多様なサイトが存在し、その一部が違法取引や犯罪利用に結び付く「闇サイト」と呼ばれています。

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.onionドメインで構成されているオニオンランドは、通常のブラウザでアクセスしても表示されません。

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.onionドメインのサイトは、Tor接続に対応したブラウザでのみ閲覧できます。
匿名性を確保しながら情報を届けるため、BBCやニューヨーク・タイムズといった主要メディアも独自のサイトを開設しています。

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オニオンランドには Googleや Bingのような一般的な検索エンジンはなく、代替としてAhmiaなどが利用されています。しかし、真っ当なサイトは少なくリンク切れも多いため、目的のサイトはリンク集を辿るなど自力で探す必要があります。また、突然アクセスできなくなることも珍しくありません。

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ブラックマーケットでは、複製されたクレジットカードやプリペイドカード、マルウェアやその開発キット、薬物・銃火器・偽札といった違法商品が取引されています。さらに、ハッキングされた暗号資産ウォレットや、SNSアカウントのハッキング請負、児童ポルノや嗜虐性の強い動画を扱う会員制の違法サイトも存在します。

決済の多くはビットコインで行われますが、取引が正常に行われる保証はなく、各国の公的機関による監視や摘発で閉鎖に追い込まれるケースも少なくありません。

闇サイト/ Tor関連事件

闇サイトやTorネットワークは匿名性が高いため、これまで数多くの犯罪に悪用されてきました。以下に、日本国内外で実際に摘発や報道が行われた代表的な事件を挙げます。

闇サイト関連事件

  • 2007年:闇サイト殺人事件
    「闇の職業安定所」を通じて知り合った加害者3名が、女性を拉致・監禁・強盗・殺人した残忍な事件。
  • 2018年:Welcome to Video事件
    ダークウェブ上で運営されていた児童性的虐待動画を扱う世界最大規模の違法サイトの一つ。韓国警察と米国FBIの合同捜査により運営者が逮捕され、ビットコインの取引履歴を基に世界38か国で利用者337人が摘発。日本国内でも複数人が逮捕された。
  • 2021年:Boystown事件
    登録ユーザーが40万人を超えていた児童性的虐待動画を扱う大規模違法サイト。ドイツ連邦刑事庁が国際合同捜査を行い、運営者3名と主要ユーザー1名を逮捕。

Tor関連事件

  • 2012年:パソコン遠隔操作事件
    「2ちゃんねる」でユーザーを誘導しトロイの木馬を感染させ、遠隔操作による犯罪予告が行われた事件。犯人はTorを利用して身元を隠していた。
  • 2018年:COINCHECK NEM流出問題
    仮想通貨取引所COINCHECKがクラッキングされ、顧客資産約580億円相当のNEMが流出。闇サイトで他の仮想通貨に換金された。
  • 2018年:児童ポルノ公開事件(京都府警摘発)
    ダークウェブ上に児童ポルノ画像を公開していたとして、青森県在住のサイト管理人が逮捕。
  • 2020年:仮想通貨取引アカウント情報販売事件
    ダークウェブで児童ポルノ、薬物、仮想通貨アカウントの違法取引が行われ、全国で20名が一斉検挙された。

備考:個人情報流出とダークウェブ

よく個人情報が流出した際に「二次被害はない」と発表されることがありますが、それは流出した情報が直接悪用されなかった場合に限られます。
実際には、データブローカーが流出情報に加えてアプリが収集する位置データなども統合し、メールアドレスや電話番号、住所、デバイスIDなどを紐づけて詳細なプロファイルを作成します。そのためダークウェブで売買されるリストから流出元を特定することは困難ですが、利用者が被害を受けるリスクは確実に高まります。

更新履歴

  • 2025-09-08:サイトのリニューアルに伴い、記事を再編集
  • 2023-12-01:闇サイト/ Tor関連事件の項目を追加
  • 2018-06-07:初版公開

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