Wake On LAN
Wake On LAN (WOL)は ネットワークアダプタ(NIC)が実装している機能で、ネットワークアダプタは MACアドレス(ノードID) という固有の識別番号を持っており、マジックパケットと呼ばれる信号を MACアドレスに送信することで NICからパソコンを起動できる。
電源ケーブルが接続されているパソコンは シャットダウンしている状態でもマザーボードには待機電源が供給されているため、WOLを有効にすると 起動ボタン の代わりになるアプリケーションを使用して、ローカルネットワークや外部ネットワークからパソコンの起動が可能になる。
電源の状態
システムの電源状態
ACPI(Advanced Configuration and Power Interface)は電源管理の規格で、S0 ~ S5 までのスリープ状態(スリーピングステート)が規定されている。
S0 | 通常の運用状態 |
S1 | スタンバイ |
S2 | サスペンド |
S3 | スリープ |
S4 | 休止 |
S5 | 電源断(ソフトオフ)デバイスに電源が供給されている状態でシステムがオフ |
S1~S3はメモリ以外の給電が停止している状態で、Windowsがシャットダウンしている状態が 電源断(S5)。
デバイスの状態
D0 | フルオン(フルパワーで稼働し、フル機能を提供) |
D1 | ローオン(低電力での動作し、完全に機能するがパフォーマンスが低下) |
D2 | スタンバイ(部分的に電力が供給される) |
D3 | スリープ(最低限の電力が供給され、システムの電源状態を上げることが可能) |
D4 | オフ(デバイスが停止している状態) |
Windows 8以降 Windowsのシャットダウンは 電源断(ソフトオフ)の S5 から S4 D3の ハイブリットシャットダウン に変更された。
シャットダウン/ ハイブリットシャットダウン
Windows 10/ 11 では クラシックシャットダウン(S5)と ハイブリッドシャットダウン(S4)の状態から Wake On Lanでの起動は サポートされていない ため、基本は「休止」か「スリープ」からの起動になるが、ネットワークアダプタによっては S5(電源断)から WOLで起動できるものもある。
電源ボタンに スリープ や 休止 が表示されていない場合は、コントロールパネル から 電源オプション を開き、電源ボタンの動作を選択する を開き、現在利用可能ではない設定を変更します をクリック。
シャットダウン設定 で電源ボタンに表示するスリープステートを有効にする。
旧バージョンの Windows10 ではハイブリッドシャットダウン(S4)を無効にすることで S5からの起動が可能になったが、22H2以降の Windows10/ 11では ハイブリットシャットダウンが有効でも環境によっては S5から起動できる。
一通りの設定を終えて WOLで S5から起動できない場合は「高速スタートアップ」を無効にして起動を試してみる。
シャットダウン設定 にスリープが表示されていない場合は、スタート を右クリックして ターミナル(管理者) を開き、下記のコードを入力。
powercfg /a
スタンバイ(S3)はサポートされていません と表示されたら スリープ は利用できないパソコンなので 休止 を使用する。
BIOS/ UEFIの設定
パソコンの起動時にUEFI/ BIOSを呼び出す。
BIOS/ UEFI のセットアップを呼び出す 代表的なキーは F1・F2・F8・F10・F12・Delete などで、 PCメーカーやマザーボードによって異なるためマニュアルを参照。
ASUSのようにEZモードがある場合は Advance モード に切り替える。
Boot タブに オンボード LANからブート というような項目がある場合は 有効(Enabled)にし、変更が完了したら ESC キーを数回押して退出画面を開き、設定を保存 してからパソコンを通常起動させて完了。
Boot タブの Fast Boot と Deep Sleep、Advanced タブの South Bridge Configuration に Deep Sleep がある場合は 無効(Disabled) になっていることを確認。
PCIeに挿している LANカードを使用する場合は 詳細 や Advanced タブにある APM (Advanced Power Management)や ACPI Configurationと表示されている項目を開き、PMEによる電源 ON、 PCIE Device Power ON など PCIeによる起動を有効(Enabled)にする。
使用しているマザーボードによって BIOS/ UEFI の設定項目が異なるため、詳細はマザーボードのマニュアルや PC メーカーの取説を参照。
ホームゲートウェイの設定 - ポート開放
ホームゲートウェイはインターネットへの道に ポート という検問所を作って不審者が通過しないよう監視しているので、1つの扉(ポート)を開けて外部からの通信が通過できるよう設定する。
ルーターの管理画面にアクセスし、ポートマッピング設定 などポート開放の設定画面で編集。
- LAN側ホスト:ブロードキャストアドレス(末尾が255)か起動するパソコンの IPアドレス
- プロトコル:UDP
- ポート番号:9番ポート
LAN側ホストはパソコンの IPアドレスを固定(静的 IP)している場合は起動するパソコンの IPアドレスを登録できるが、IPアドレスの自動取得(DHCP)を使用している場合や複数のデバイスで WOLを利用する場合はブロードキャストアドレス(255)を使用する。
IPアドレスの固定
WIN + R キー で ファイル名を指定して実行 を呼び出し、ncpa.cpl と入力して ネットワーク接続 を開く。
稀にブロードキャストを使用できないホームゲートウェイがあるので、WOLが通らないようであればパソコンの IPを固定し、ブロードキャストの代わりに設定した IPアドレスを使用する。
使用しているネットワークアダプタのコンテキストメニューから プロパティ を選択。
インターネットプロトコル バージョン4(TCP / IPv4) を選択して「プロパティ」をクリック。
次の IP アドレスを使う にチェックを入れ、IP アドレス・サブネットマスク・デフォルトゲートウェイ と DNSサーバ を入力。
- IPアドレス
ホームゲートウェイの初期値(デフォルトゲートウェイの IPアドレス)に合わせ、ホストアドレス(末尾の値)を2 ~ 254の範囲で設定する。 - サブネットマスク
255.255.255.0 に設定。 - デフォルトゲートウェイ
ホームゲートウェイが使用している IPアドレス。 - 優先 DNS サーバー
デフォルトゲートウェイと同じ IPアドレス(ISP の DNS)か Public DNS サーバの IPを入力。 - 代替 DNS サーバー
ISPや Public DNSサーバで提供されている代替DNSサーバの IPを入力。
不明な場合は空白にしておく。
ネットワークアダプタの設定
Windows 10/ 11 は スタート のコンテキストメニュー( WIN + X )から デバイスマネージャー を選択。
ネットワークアダプター を展開し、実装しているネットワークアダプタをダブルクリック。
プロパティ の 詳細設定 タブで Wake On ~ や PME という項目を見つけて 値 を 有効(Enable)にする。
ネットワークアダプタのドライバのバージョンによっては Wake On ~ や PME という項目が全くない場合もある。
ネットワークアダプタの プロパティ に 電源の管理 タブがあれば、このデバイスで、コンピューターのスタンバイを解除できるようにする と Magic Packet でのみ、コンピューターのスタンバイ状態を解除できるようにする の両方にチェックを入れる。
設定項目がない場合は手順をスキップして次へ進む。
起動スイッチデバイスの設定
ネットワークアダプタ・UEFI/ BIOS・ホームゲートウェイの設定が完了したら 起動ボタン になるデバイスを設定する。
- Windows用の WOLアプリは Aquila WakeOnLAN のインストールと使い方 を参照。
- Android用の WOLアプリは WolOn – Wake on LAN の設定と使い方 を参照。
ルーターのモデルによっては ARPテーブル(IPアドレスから MACアドレスを特定するデータ)が一定時間経過後に破棄されてしまうため、WOLの設定後 PCをシャットダウンして数十分以内であれば起動できるものが、数時間以上の時間を空けてから WOLでの起動に反応しないという特殊な現象が発生するので、起動スイッチデバイスではホームゲートウェイに繋がっているすべてのデバイスに向けて WOLの信号を送るブロードキャストアドレスを使用する。
動画で見る Wake on LANの設定
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