脱Googleの手引き – プライバシー重視の環境構築

脱Google(De-Google)活動は、利便性と引き換えに利用者の膨大なデータを収集しているGoogleを、日常のインターネット利用から排除しようとする草の根の取り組みです。

脱Google – Googleの利用に関する懸念

Googleは検索、メール、クラウド、スマートフォンOSなど多様なサービスを通じて利用者データを収集しており、その仕組みが行動追跡や広告配信に直結することが、プライバシーを脅かす大きな懸念となっています。

  • フィルターバブル
    ユーザーが検索していると推測される結果を優先的に表示するアルゴリズムを採用しているため、確証バイアスが生じやすく、現実と乖離した情報を基に判断・行動をする可能性があります。
  • AIによる回答
    AIオーバービューのような汎用分野での AI正答率は通常60〜80%程度とされており、誤情報の拡散や意図的な情報操作につながる懸念があります。
  • ユーザーデータの追跡
    行動履歴を複数のデバイスやサービスにまたがって収集し、詳細な個別プロファイルを作成・利用しています。
  • 透明性の欠如
    どの範囲のデータが収集され、どのように利用されるかについて、ユーザーに十分な情報が示されていません。
  • プライバシー設定の複雑さ
    関連する設定項目が複数箇所に分散しており、利用者にとって把握や制御が難しい状態になっています。
  • データ漏えいのリスク
    サイバー攻撃や内部不正、設定ミスなどを要因としたデータ漏えいの危険が存在します。
  • 独占的支配力
    検索や動画配信、広告など複数の分野で高い市場シェアを持っており、利用者は事実上 Googleのサービスに依存せざるを得ない状況があります。
  • アカウント連携による依存
    Gmailや YouTubeなど主要サービスが Googleアカウントに統合されているため、一つのアカウントに依存しやすく、移行の障壁となっています。
  • 削除や移行の困難さ
    データ削除やサービス移行の手続きが複雑で、完全にGoogleから離れることが難しいケースがあります。

近年、Googleはユーザーの利便性向上を掲げながらも、広告配信や収益モデルの変化によってサービス仕様を大きく変更しており、その結果として利便性やサービス品質に影響が生じているとの指摘があります。

データ収集の抑制

Googleは収集した個人情報から精緻なプロファイルを作成し、広告配信の最適化に活用しています。位置情報から居住地域、検索・閲覧履歴から興味・関心、アプリ利用や決済情報から生活パターンを推定できる仕組みがあり、広告主は特定の対象に効率的にリーチできます。そのため、個人情報の収集はGoogleの中心的な収益源となっており、ユーザーが設定で抑制できる範囲は限定的です。

Googleアカウント設定

GoogleはGDPR(一般データ保護規則)の施行を契機に、ユーザーが自らデータ管理を行えるようアカウント設定を刷新し、「履歴の設定」や「パーソナライズド広告」などの項目を整備しました。これにより、検索や利用履歴、YouTubeやアプリのデータを一定範囲で制御できるようになりました。

google-privacy 001

編集するのは[履歴の設定]と[パーソナライズド広告]です。

  • 履歴の設定
    デフォルトで[ウェブとアプリのアクティビティ]と[YouTubeの履歴]が有効になっているので、オフにします。[ウェブとアプリのアクティビティ]では保存されているアクティビティも削除します。
  • パーソナライズド広告
    パーソナライズド広告は、アカウントに追加された個人情報や Cookieを使用してユーザーの興味/ 関心を推測して広告を表示する「行動ターゲティング広告」です。
    「マイアドセンター」から無効にできます。

パーソナライズド広告を無効にすると、Googleアカウントの情報は利用されませんが、ウェブサイト閲覧時に生成される Cookieがユーザーの行動を追跡しているため、ターゲティング広告自体は無効化されません。
ターゲティング広告を無効にする場合は、ブラウザの Cookie削除やプラグインなどでトラッキングをブロックする対策が必要です。

複数アカウントの利用

Googleアカウントは無料で複数作成できるため、用途ごとにアカウントを分けることで、収集されるデータを一部分散できます。さらに、[履歴の設定]や[パーソナライズド広告]といったアカウント設定を併用することで、プライバシー保護の効果を高められます。

アカウントの作成

Googleアカウントは原則無料で作成できますが、短期間に複数のアカウントを作成する場合などには、不正利用防止やスパム対策のため電話番号など追加情報の入力を求められることがあります。

アカウントの切り替え

ChromeやFirefoxではプロファイル機能を利用してアカウントごとに環境を分離できるため、仕事用と個人用を分けるなど、個人情報が混在しないように管理できます。
ブラウザにログインすれば Gmailやその他の Google関連サービスもプロファイルに紐づけられるので、運用に気をつければ比較的実行しやすい方法です。また、モバイル端末でもマルチアカウントをサポートしているため、アプリごとに使用するアカウントを切り替えて利用できます。

Googleは端末識別子やIPアドレスをもとに同一利用者を推定できるため、同じデバイスで複数のアカウントを利用しても分離効果は限定的です。

デバイスごとの分離

本格的に Googleの追跡を避けるには、デバイスごとに別のアカウントを使用し、常時 VPNに接続して IPアドレスをマスク化、さらに Cookieの削除やトラッキングをブロックする拡張機能を導入する必要があります。
ただし、この方法ではクラウドサービスの利点であるデータ同期が大きく損なわれます。

Googleサービスからの移行

Googleによる個人情報の収集を効果的に抑制、阻止する最も有効な手段は、Googleへの依存度を減らすことです。

2000年代から2010年代前半にかけて、Googleはユーザビリティを重視した質の高いサービスを提供していました。その後、創設メンバーの退社やサンダー・ピチャイ氏のCEO就任を経て、広告や収益を重視する方向に転換したとの指摘があります。

個人情報を収集しない検索エンジン

検索エンジンは簡単に移行でき、しかも個人情報収集の抑制に効果的です。

  • DuckDuckGo
    検索履歴を保存せず、利用者の個人情報を収集しない検索エンジンです。ブラウザ拡張やアプリと組み合わせることで、トラッカーブロック機能も利用できます。
  • Brave Search
    Brave Softwareが開発した検索エンジンで、独自のインデックスとアルゴリズムを用いて検索結果を表示します。広告は表示されますが、ユーザーの行動追跡やプロファイリングは行いません。

プライバシーを保護するウェブブラウザ

プライバシーを重視したウェブブラウザを利用することで、広告やトラッカーによる行動追跡を抑制し、個人情報の漏えいリスクを軽減できます。

  • DuckDuck Go
    DuckDuckGoが開発するプライバシー重視のウェブブラウザで、サードパーティクッキーやフィンガープリントを自動的にブロックします。モバイル版に加え、Windows/Mac版も提供されており、検索や閲覧時に余計な要素を排除する設計です。
  • Firefox
    Mozillaが開発するGeckoエンジン採用のブラウザで、デフォルトでトラッカーや仮想通貨マイニングをブロックし、閲覧履歴も収集しません。
    FAQに「個人データを広告主に販売しない」との記載がありましたが、2025年3月の更新で削除され、表現変更をめぐって議論を呼んでいます。
  • Brave
    オープンソースの Chromiumをベースにしたブラウザで、広告やトラッカーを標準でブロックするなど、プライバシー保護機能が強化されています。
  • Torブラウザ
    Firefoxをベースにしたブラウザで、通信をTorネットワーク経由で多層暗号化し、利用者の匿名性を高めます。高度なプライバシー保護が可能ですが、通信速度が遅くなる傾向があり、一部サービスでは利用が制限されるため、常用ブラウザというよりも特定用途での利用に適しています。

プライバシー保護を重視したメールサービス

プライバシー保護を重視したメールサービスを利用することで、送受信内容の暗号化やログ非保存により、第三者による監視やトラッキングのリスクを大幅に抑えられます。

Gmailは無料で利便性の高いサービスですが、外部アプリのアクセスを許可した場合には、認可された開発者が Gmailメッセージにアクセスできます。2018年には実際にアプリ開発企業の従業員が数千件規模のメールを閲覧していた事例も報告されており、メール内容が第三者に扱われるリスクがあると指摘されています。

  • Proton Mail
    エンドツーエンド(E2E)でメールを暗号化するだけでなく、ログの保存やトラッキングを行わない、スイス拠点のプライバシー保護型メールサービスです。
  • Tutanota
    エンドツーエンド(E2E)による暗号化に加え、ログの保存やトラッキングを行わない、ドイツ発のプライバシー保護型メールサービスです。

データが暗号化されるオンラインストレージサービス

エンドツーエンドで暗号化され、保存データも暗号化されるオンラインストレージを利用することで、サービス提供者を含む第三者からファイル内容を保護できます。

Googleドライブは利便性の高いクラウドストレージですが、利用状況やファイル属性はGoogleに収集され、アカウントプロファイルの一部として広告やサービス運営に利用される可能性があります。また、ファイルはウイルス検出や不正利用防止のため自動的にスキャンされるほか、過去には「違法コンテンツ検出のためにファイルが確認される」ケースも報告されており、完全にプライベートとは言えません。

  • Sync
    カナダ拠点のサービスで、ゼロナレッジ方式を採用し、運営側でもファイル内容にアクセスできません。大容量プランやチーム利用にも対応しています。。
  • ProtonDrive
    スイス拠点のProtonが提供するサービスで、Proton Mailや Proton VPNと同じアカウントで統合的に利用できます。セキュリティ法制の厳しいスイス国内で運用されている点が特徴です。

De-Google OSの導入

前項で紹介したアプリをiOSデバイスで利用するだけでもGoogle依存を大幅に減らせます。ただし、Androidはオープンソースで開発されているOSのため、AOSP(Android Open Source Project)をベースにGoogleを排除した「De-Google OS」も開発されています。

De-Google OSは Google Pixelなどグローバルモデルの Android端末で動作しますが、ブートローダーのロック解除やROMのフラッシュが必要です。そのためキャリアやメーカーの保証対象外となり、インストールに失敗すると起動不能(いわゆる文鎮化)になるリスクもあります。

  • LineageOS
    無償で提供される代表的なオープンソースOSで、毎月セキュリティパッチが配信されます。Googleサービスや個人情報収集型のアプリは含まれていません。
  • iodéOS
    LineageOSをベースに、広告ブロッカーやプライバシー保護機能を組み込んだフォーク版です。一般ユーザー向けに使いやすい設定があらかじめ施されています。
  • /e/OS
    LineageOSをベースに、Googleアカウント不要で利用できる独自の「Murenaアカウント」やクラウドサービスを統合したフォーク版です。日常利用に必要なアプリが標準搭載されています。

動画で見る検索エンジンの変更方法

備考

Googleの便利なサービスは無料で利用できますが、厳密には無償ではありません。ユーザーは代金を支払う代わりに個人情報を提供しており、利用するサービスが多いほど収集される情報が統合され、プロファイルの精度と価値が高まります。そのため、個人情報収集の潜在的なリスクを低減するには、アカウントに関連付けるサービスを減らすしかなく、利便性とのトレードオフになります。

De-Google環境を構築するには、メール・カレンダー・クラウドストレージ・VPNなどを提供しているProtonの導入が現実的な選択肢の一つですが、無償利用には制限があるため、アプリの利用頻度や必要な容量を確認しておくことが重要です。

個人情報の収集は目に見えず、直接的な影響も感じにくいため軽視されがちですが、利便性と引き換えにセキュリティリスクを抱える点は変わりません。
どこまで Googleに依存するかを見極め、自分に合った代替手段を選択することが重要です。

更新履歴

お問い合わせ

📬 ご質問・ご連絡は、メールか SNS(X または Bluesky)にて受け付けています。

原則として XではDMでのご連絡をお願いいたします。投稿への公開コメントでも対応可能ですが、内容により返信を控えさせていただく場合があります。
※ Blueskyには非公開メッセージ機能がないため、メンションによる公開投稿でのご連絡をお願いいたします。

※投稿内容に関するご質問には可能な範囲でお答えします。
ただし、当サイトはアプリの開発元ではなく、技術サポートや不具合の対応は行っておりません
また、すべてのご質問への返信を保証するものではありませんので、あらかじめご了承ください。