自転車の交通ルールと自転車事故


夜間の無灯火が義務とは知らず、自転車の走行路が車道だったことも知らなかったので、個人的に非常識なだけかと思ったら、そうでもなかった。

2005年の記事だが、自転車の走行路が道交法で規定されていることを知っていると答えた人は全体の6割。しかし、自転車の走行路を「車道」と答えたのは全体の2割に過ぎなかったらしい。更に自転車でどこを走行するかという質問には9割以上が「歩道」と答えたというから、自転車の道交法は全く浸透していない。

チャリ通を初めてから最初に注意されたのが夜間の無灯火。
いま思えば検挙されても不思議ではないが、その時は「すいませーん」で終了したし、罪悪感など全くない。おそらく自転車を利用している大半の人が、普通に信号を無視し、携帯電話を片手に運転し、二人乗り、並走、イヤホンで音楽を聞いていて、それでも法を犯しているという意識は皆無に近いと思われる。

2015年6月1日に施行された改正道交法により、自転車の交通違反に対しての取り締まりが強化された。
昨今の状況から考えると当然の流れだと思うが、何よりも自転車の交通ルールを周知するのが先決だと思う。






自転車の道路交通法

自転車は道交法でリヤカーや馬車、人力車と同じ軽車両に分類される。
よく堺筋などでダンボールを積んだリヤカーに車が難儀している光景を目にするが、リヤカーが車道を走行するのは合法。ただ、堺筋ではリヤカーが逆走しているのでこれは違法。

法定速度については原付きや路面電車などのように、道交法で軽車両の規定が無いため、車両の規定に準ずることになる。
ロードで本気モードの人が時速40~50kmで走っているのを見かけるが、法定速度に関しては合法になる。ただし、道交法には第70条という万能の規定が存在するので、この速度で事故を起こしたら過失は免れない。

道路交通法 第70条第1項(安全運転の義務)

「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」

自転車もこの安全運転の義務があるため、一般道での高速走行は「安全運転の義務」に抵触する可能性がある。
携帯電話やスマホを操作しながらの運転に関しては、第71条第5号の5(運転者の遵守事項)に規定されているが、この項目では「車両」ではなく「自動車又 は原動付自転車」という記載のため軽車両は含まれないが、携帯を操作しながらの運転は「安全運転義務違反」になるのでアウト。

いくら道交法に該当の規定がなくても、この70条がある限り、少しでも危険と判断される行為は全て違法になり、それで事故を起こせば当然ながら過失になる。
安全運転義務違反は道交法第119条1項9号により「三月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する」となっている。

夜間の点灯

自転車の夜間点灯については第52条(車両等の灯火)で義務付けられ、公安委員会が定める道路交通法施行細則で詳細が定められているので、各都道府県によって異なるらしい。
大阪府道路交通規則では、以下のようになっている。

1)白色又は淡黄色で、夜間前方10メートルの距離にある交通上の障害物を確認することができる光度を有する前照灯
2)橙色又は赤色で、夜間後方100メートルの位置から点灯を確認することができる光度の尾灯。
ただし、夜間、道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号)第32条第1項の基準に適合する前照灯で後方100メートルの位置から照射した場合に、その反射光が照射位置から確認できる橙色又は赤色の反射器、反射性を有するテープ等は、尾灯とみなす。

無灯火の罰則は第120条1項5号に5万円以下の罰金に処せられる。

自転車の通行区分

道交法第17条(通行区分)で「車両は歩道と車道の区別がある場合は車道を通行しなければならない。」と定められており、第17条の2で「著しく歩行者の通行を妨げることとなる場合を除き、路側帯を通行することができる。」となっている。 また、第18条(左側寄り通行)で「軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。」と規定されている。

要約すると自転車は車道を通行しなければならなず、車道を走る場合は左側走行が義務付けられている。

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上図でブルーの部分、つまり路側帯が自転車の走行路になるが、通行の安全を確保するため例外として歩道の通行(徐行)も可になっており、歩道や自歩道(自転車歩行者道)では双方向通行が可。

70歳以上の高齢者と13歳未満の子供は自転車での歩道の通行が認められており、子供にはヘルメットの着用を推奨(義務ではない)している。子供の自転車での転倒時に最も多いのが頭部の打撲らしい。
また、子供乗せ自転車に関しては、子供が6才未満の場合は二人乗りにはならないが、道交法的には一般扱いのために車道の走行が原則になる。
走行中の自転車から飛び降りる芸当をこなす元気で危険な子供もいるため、子供乗せ自転車に車道を走らせるのはいかがなものかと思う。

前述のとおり軽車両は車道の左側を走行するのが原則だが、これまで第18条の罰則は第18条2項の「歩行者の側方を通過す るときは、これとの間に安全な間隔を保ち、又は徐行しなければならない。」に違反した場合のみ罰則があったが、2013年12月1日の道交法改正により、 「路側帯の左側通行」に違反した場合も3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科せられるようになった。

朝、本町通りを阿波座方面から森ノ宮方面に走っていると、前方から流星のごとく逆行してくる自転車に遭遇する。
更に路駐の車もあるので、路駐車を避けて右に出ると、前方から自転車が突っ込んでくるという、縦スクロールのシューティングゲームさながらの状況になっていて非常に危険。
た だ、自転車の通行区分に関しては、交通ルールを遵守していない利用者も悪いが、車道を走るように規定しておきながら、自転車の走行路がほとんどなかった り、妙に傾斜していたり安全とは言い難い。その上、車やバイクの運転者も自転車の交通ルールを知らないため、車道を走行する自転車の危険度は更に増加す る。
それが理由というわけでもないのだろうが、安全を確保するために自転車に関する道交法の規定は意外と曖昧な部分が多かったりするので、話が余計にややこしくなる。
自転車のマナーが悪いのは問題だが、自転車を利用する環境にも問題はある。

並走の禁止

道交法第19条(軽車両の並進の禁止)では「軽車両は、軽車両が並進することとなる場合においては、他の軽車両と並進してはならない。」と定められており、違反した場合は第121条1項5号により「二万円以下の罰金又は科料に処する。」となっている。

並走しているのをよく見かけるのが学生とママさん。器用に喋りながら並走しているが、あれは立派な交通違反。迷惑なだけでなく、大抵は歩道で並走しているので非常に危険。

自転車の信号と交差点

自転車は前述のとおり車道を走るのが原則だが、信号は歩行者用信号に「自転車・歩行者専用」の標識があれば歩行者用、無ければ自動車用の信号に従う。
cross_begin9「自転車・歩行者専用」の標識は左図のようなもので、意識していないときには存在すら気付かないが、意外と歩行者用信号に付いている。この標識が歩行者用 信号にあれば、車道を走行中でも歩道の信号に従わなければならない。車やバイクを運転していると当然ながら車道の信号を見る癖が付いているので、自転車で 車道を走っている時に歩道の信号を見るのには非常に違和感があり、つい車道の信号を見てしまう。更に左図の標識がなければ車道の信号に従わなければなら ず、頭でシミュレーションする分にはややこしくないのだが、実際に車道を走っていると予想以上に面倒。この交通法規を作った人達は自転車で車道を走ったこ とがないと思われる。

交差点で右折する場合、自転車は二段階右折が義務付けられており、横断歩道があろうが、自転車横断帯があろうが、例外なく二段階右折しなくてはならないらしい。
つまり左側寄り通行をするため、右折する場合は先ず直進して交差点を渡り、渡りきった所で信号が変わるのを待ち、右へ進むことで常に左側通行が可能になる。交差点手前の信号で右に曲がると逆行になるので違反。

交差点などで見かける自転車のマークが付いた部分が自転車横断帯で、この自転車横断帯が交差点内にあれば自転車に乗ったまま徐行で交差点を渡ることができる。交差点内に自転車横断帯がなければ自転車から降りて渡らなければならない。

自転車の飲酒運転

飲酒運転の禁止は道交法第65条(酒気帯び運転等の禁止)で「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」と定められており、車両等と規定されているので車やバイクだけでなく自転車などの軽車両も該当する。
ただ、飲酒運転は「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」の2種類に分けられ、酒酔い運転は運転能力を欠く状態での運転のことで、軽車両も例外なく刑事罰の対象 になる。「酒気帯び運転」は政令で定められている基準値を超えるアルコールを体内に保有した状態での運転で、道交法第117条の42で「第65条(酒気帯 び運転の禁止)第1項の規定に違反して車両等(軽車両を除く)を運転した者で、その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコ-ルを保有する状態にあった者」と定められているので、自転車での酒気帯び運転は違反だが罰則はない。

自転車での酒酔い運転は車やバイクと同様、道交法第117条の2で5年以下の懲役又は100万円以下の罰金が定められている。

一般的な違反

一般的な違反というのも妙な表現だが、悪びれることなく行われている違反行為。

信号無視

以前、何かの話をしている際、「自転車のメリットは信号を守らなくてもいい事」と言い放った部下がいた。
道交法第7条(信号機の信号等に従う義務)には「道路を通行する歩行者又は車両等は、信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等に従わなければならない。」と規定されており、第119条1項1号2で違反者は「三月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。」とある。

徐行義務違反

ある意味、信号無視よりも平然と無視されているのが徐行義務。
道交法第9条(歩行者用道路を通行する車両の義務)及び第42条(徐行すべき場所)では車両の徐行が定められている。
徐行の標識がある場所、道路の曲がり角付近、上り坂の頂上付近、勾配の急な下り坂、左右の見通しがきかない交差点に入ろうとするとき、歩行者のそばを通るとき、などは全て徐行義務がある。
徐行とは「直ちに停止することができる速度での進行」で、時速4~5kmとするとゆっくり歩くのと変わらない速度になる。
徐行義務違反は三月以下の懲役又は五万円以下の罰金。

一時停止違反

徐行義務と同じくらい無視されているのが一時停止義務。信号がない交差点で一時停止している自転車など見たことがない。
第43条(指定場所における一時停止)には「車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきこ とが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなけれ ばならない。」と規定されている。
一時停止義務違反も三月以下の懲役又は五万円以下の罰金。

他の車両に追いつかれた車両の義務

道交法第27条(他の車両に追いつかれた車両の義務)は、他の自転車が自分をに追いついた際、その自転車が追い抜くまで加速することを禁止しており、違反すると第120条第1項2号により5万円以下の罰金になる。

自転車事故と賠償責任

最近、自転車のマナーが悪いという記事をネットでよく見かける。確かに信号無視、無灯火、逆走などが平然と行われ、車から見れば車道を走っている自転車は危険で邪魔な存在に違いない。
ただ、視点を自転車に切り替えれば、車のマナーも同様に悪い。路駐はもとより、ウインカーを出さずに左折したり、ハザードを付けたまま動き出したり、横断歩道にさしかかろうとしているのに強引に左折したりで、中には結構危険なシーンもある。
チャリ通がブームになり、自転車の利用者が増加しているらしいので、交通事故も増えているのかと思いきや、意外にも自転車の事故は減少傾向にある。

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※内閣府が発表している「自転車交通の総合的な安全性向上策に関する調査報告書」linkより抜粋。

自転車事故と保険

警察の資料によれば、全国平均で交通事故における自転車の関与比率は約20%。ところが大阪と東京は自転車の関与比率が30%
人口と利用者が多ければ、事故率が高くなるのは当然だが、自転車事故は思った以上に多かった。
自転車の普及率は意外にも埼玉がトップで、続いて大阪と東京。また、移動手段としての自転車の利用率は大阪がトップで2位以下に四国の各県が続いており、 大阪は利用者に比例して事故率も高いが、四国の各県は分担率に比べて事故率が低い。単純に交通量の差もあるが、地方に行った時に感じる「時間の流れの違 い」が影響しているように感じる。

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※大阪府交通安全協議会の「自転車安全利用推進のための重点行動指針」linkより抜粋。

年齢別では自転車事故の4割が24歳以下で、これも単に若者のマナーが悪いというだけでなく、若年層の自転車利用率が高いことも関係している。
無論、最近多いのがスマホを見ながら自転車に乗っている人達で、ほとんどが学生。あれで事故を起こさないほうが不思議な曲乗り状態。
携帯電話の使用については「安全運転義務違反」に該当するので、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金に処せられる。

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事故そのものの原因は「安全不確認」が最も多く、安全不確認と似ている動静不注視が事故原因の大半を占めていることになる。
安全不確認は進路変更次の後方確認や交差点進入時の左右確認など、危険予知によって本来必要とされる確認を怠っていることで、動静不注視は還元すれば「危険予知の甘さ」のことで、認識していたにも関わらず「~とは思わなかった」といった状況を指している。

以前、免許更新時の講習で「負の成功体験」という耳 慣れない言葉を聞いた。大きな事故は「負の成功体験の積み重ね」によって起こると言う。本来は一時停止で左右の確認が必要な交差点で、人通りが少ないため に不注意で一時停止せずに通過してしまった。この時は不注意で行ったことだが、何事もなかったために、次回は故意に一時停止せずに通過して成功する。人は 負の成功体験は記憶しやすく、ここは「大丈夫」だという認識を持つようになるらしい。もとより事故の可能性があるから一時停止が義務付けられているので、「大丈夫」という負の成功体験による油断が事故を未然に防ぐ可能性を失わせることになる。

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自転車事故で被害者になる場合は車やバイクとの接触だと思っていたが、意外と自転車同士の衝突が大きな事故に繋がっているケースが多い。
無様にコケた経験から言うと、「若いつもりでも着実に年はとっている」ということ。体力そのものに衰えを感じなくても、咄嗟の反応は明らかに遅くなってい る。若い時よりも判断力は向上していると思いたいが、仮に正しい判断を下したところで肉体が実行できなければ意味が無い。
普段から気を付けていたとしても、いざというとこに身体が動かなければ事故の回避は難しい。
そして一旦事故を起こしてしまうと待っているのはシビアな現実。
先日、神戸地裁で自転車の人身事故で約9,500万円という高額倍賞を命じる判決を下した。加害者は当時小学校5年生。賠償は「監督義務を果たしていな い」ということで母親に命じられている。被害者は事故によって一命は取りとめたものの意識は戻らず寝たきりの状態になっている。
事故の原因は下り坂での前方不注意。事故発生は9月22日の午後7時前なので、それなりに暗くなっていたと思われる。
記事ではライトは点灯していたと書かれていた。

近年、高額賠償が命じられている事例は多く、増加傾向にある。
スピードの出し過ぎと前方不注意、夜間の無灯火など、明らかに加害者の過失と思われる事故がほとんどだが、明日は我が身。自分が加害者にならないという保証はどこにもない。

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※日本損害保険協会のパンフレットから抜粋。

そこで損害保険。
別に保険屋の回し者ではないが、さすがにこれだけ高額賠償の判決が出ると、それこそ万一に備えたくもなる。
自転車保険の内容は主に「個人賠償責任保険」と「傷害保険」で、どれも月々500円程度で加入できる。

ただ、自転車専用保険と銘打っても、内容が前述のとおり個人賠償責任保険と傷害保険なので、すでに何かしらの損害保険に加入していれば代用できる範囲になる。
個人賠償責任保険は自動車保険などの特約でプラスすることが可能で、傷害保険の方は医療保険や生命保険でカバーできる可能性があるので、すでに加入している保険内容を吟味したほうが賢明。
無論、保険に加入したから安心というわけではない。保険はあくまで民事上の損害賠償に対するものであり、道交法に違反して事故の加害者になった場合は刑事責任が問われ、重過失致死傷罪で実刑を喰らえば5年以下懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金になる。
いろいろと調べて思ったことは、事故ったらアカンってことに尽きる。





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